03. oneday/4月14日
カリカリ、カリカリカリ。
教室はシーンとしてて、聞こえるのはシャーペンの字を書く音、だけ。
『なぁ、名前?』
「……………」
『名前ー』
「……………」
『……、ちゅぅするで「なになになに!どしたの白石君!?」』
『聞こえてたんならシカトすな。』
「し、してないよ!日誌に集中してただけ」
『ま、そうゆうことにしといたるわ』
今日は2人揃って日直。
放課後、さっさと帰りたいアタシは(白石君だって部活あるだろうし)白石君を無視して日誌を書いてたってゆうのに何か変な台詞が聞こえてきたせいで無視も出来なくなっちゃったじゃない。
『やっぱ俺と名前は赤い糸で繋がってんねんな』
グニャリ、そんな音を立てて日誌の文字が升からはみ出した。
「あの、えっと、いきなり何?」
『やってな、日直一緒なんやで』
「うん。だから?」
『“だから?”じゃないっちゅーねん!』
「は、はい!」
『俺等、出席番号やって違うやん?せやのに一緒に日直になれたとか運命以外何物でもないやん』
「うーん…」
『神様はちゃんと見てくれてんねんな』
そんな嬉しそうに言われると否定出来ないじゃない…
たかが日直なのに。されど日直。そう思ってくれてるのかな。この人はどこまでが冗談なんだろう。
「……よし、出来た!」
『お疲れさん。全部書かせてごめんな』
「ううん、白石君は黒板消してくれたし」
『あんなんすぐ終わったし。せやけど、日誌は名前に書いてほしかってん』
「どうして?」
『日誌に日直の名前書くやん。名前の字で俺の名前書いてもらえるし』
名前の字、可愛くて好きやねん。
なんだその理由は。
どうしてこうもキザな台詞がすらすら出てくるの?
恥ずかしいし、照れちゃう、だけどね。
他の女の子にもそう言ってるんじゃないの?
こんな冴えないアタシにだけ、なんて思えないの。
「またそうゆうこと言うんだから!」
『しゃーないやん、ホンマのことやし』
信じたい。
信じたくなる。
だから止めて。
1人舞い上がるなんて滑稽じゃない。
「もう……白石君も部活あるのに待たせちゃってごめんね、帰ろっか、日誌はアタシが提出しておくから」
じゃあ、と席を立って教室を出ようとするアタシを制止するのは他の誰でもない、彼。
誰が帰っていい言うた?
と腕を掴まれ阻止される
(し、白石君!)
(まだ帰らんでええやん。もう少し、だけ)
(そんな言い方ズルい)
(2009)
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