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 08.



口唇と口唇が離れて、じっとアタシを見てくる白石君に恥ずかしいような照れ臭いような、とにかく体温は急上昇したのに。

その熱さえ溶かしてしまいそうな視線に、アタシまで眼が離せなかった。


dear.
bet.8 甘いブラックコーヒー


『、何やねん自分等』


放課後、いつもと同じ様に入った部室では忍足君が飛び切り驚いた顔して、その阿呆面に失笑しかけたけど愛想笑いは崩さず堪えた。
だけど半分はそんな顔する気持ちも分かるとか…全ては白石君のせい。


『何やねんて見たまんまやろ?羨ましくて嫉妬してるんか謙也は』

『な、何アホ言うてんねん!俺が聞いてんのは自分等2人が付き合うてるんかどうかや!いつの間にそんな事なっとんやっちゅう話しやで…』


そりゃ白石君くらい男前な人を捕まえたなら一般的には友達にも親にも皆に皆アピールしてやりたいかもしんない。だけどアタシはその一般的から外れる対象であって、わざわざ人に言い回る気なんか無かったし聞かれたら肯定するくらいで良いかなってそう思ってた。
何て言うか…告白のこと思い出して恥ずかしいじゃんか。

なのに白石君てば部室来るまでは普通な顔してたくせに入った瞬間、手なんか繋いできて。何なの策士な感じは。アタシが皆の前だと大人しいからって良い様にされてる気分なんですけど?


『俺等、ずっと好き合ってたんやんな?』

「え、あ、うん…」

『せやから今日から付き合う事にしました。分かった謙也?』

『お、おう…それはおめでとさん』

『何やって?今日は部活止めて祝宴したいて?あかんわー、気持ちだけ貰っとくで』

『言うてへんし!めっちゃ浮き足やん…』

「あ、あはは」


確かに白石君からはピンク色のオーラが見える気がする。さっきまでの平静さは何処行ったの!恥ずかしいし馬鹿っぽいし、なのに本当は白石君見て自分も喜んでる。

午後の授業はずっと白石君見て、昼休みと同じく声にしないで好きって何度も言って、眼が合うと身体の芯が熱くなって。馬鹿っぽいのはアタシも一緒。


「白石君、」

『うん?』

「アタシちょっと自販機行って来るね」

『せやったら俺も』

「大丈夫だから、白石君は忍足君と着替えてて」

『、分かった』


控え目に手を振って部室を出たのは装った仮面が崩れちゃいそうで、ニヤけるより引きつりそうな自分がみっともない。


「はぁ、ダメだ…」


どんだけ幸せ酔いしてんのアタシ。何があっても学校での自分は崩れないって信じてたのに本当なにこれ。


「……………」


自販機まで走って苦手なブラックを買って、一口飲むと気持ち悪いくらい苦手な筈なのに今はブラックでさえ甘ったるい。
アタシの身体は糖分で出来てんのかなって思っちゃうくらいどうしようもないらしくて。もうこのまま溶けるなら最後に1本、馬鹿な思考を広げると、


「、何やってんの…」


振動して着信を伝える携帯に心底呆れた。だって白石君、まだ3分しか経ってないのに電話ってあり得ないし。
でも、もしもしを言いながら煙草を鞄に引っ込められたから別に良いかなって事にしといてあげるから。


(20100217)

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