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 07.



冷たい風を中和してくれるような太陽はキラキラ眩しくて、白石君のミルクティー色な髪を光らせた。

その透き通った色に触れたいって言っても、笑ってくれるの?


dear.
bet.7 スキ、


「……やだ」

『やだ、やない』

「嫌なもんは嫌なの!飴だけで十分だから!」

『あーかーん。ご飯はちゃんと食べなさい!栄養取るんは常識やで』

「だ、だからって…!」


飴をひとつ渡して来た白石君はちょっと待ってて、って教室までお弁当を取りに戻ったらしい。別に良いんだけど、そこまでは全然問題無いんだけど。

飴だけでお昼を済まそうとするアタシにウインナーを差し出してきたりしてさ、何を勘違いしちゃってんのか“あーん”とか。アタシそんなキャラじゃないし、さも当然みたいな顔されたって困るんだけど!ああもうご飯済ませたって言うべきだった。


『ほら名前ちゃん、口開け』

「いーやっ!」

『何が気に入らへんの?好き嫌いあったとしてもウインナーくらい食べれるやろ?』

「そういう問題じゃない!アタシはサプリ飲むから大丈夫だし白石君のご飯なんだから白石君が食べてよ!」

『んー、頑固やなぁ』

「どっちが!」


煙草から始まって何なの?何でこんなにしつこいの?
そりゃ…白石君に素がバレてから、白石君が隣に居ること嫌じゃない。寧ろ楽しいって思ってる。ちゃんとアタシを見てくれて向き合ってくれて凄く嬉しい。白石君の優しさが、全神経を惑わせてくる。

好き、
そう思っちゃう。

だけどこれとそれとは話しが別なんだってば。


『名前ちゃん、そらサプリメントは必要な栄養分は取れるかもしれへんよ。せやけどあれは仮にも補助食なんやからちゃんとご飯食べるっちゅう行動せな楽しみが減るやろ?』

「出たー!説教ばばぁ…違った説教じじぃ!」

『……何やって?』

「白石君て学校の先生みたいっていうかお父さんていうか、性別通り越してお母さんみたいっていうかー、寧ろ…鬼?」


鬼って。言ってて笑える。何かもっと上手い例えないのかな。比喩センス無いのアタシ?
なんて屋上フェンスにもたれて空なんか見ちゃった瞬間、


『聞き分けないお口はこれやろかぁ?』

「むぐっ!」

『誰が鬼やって?説教じじぃやって?お母さんやって?もう1回聞かせて貰おかぁ?』

「ひょっひょ!はひふんほ!!(ちょっと!何すんの!!)」

『うーん?何言うてるんか分からへんなぁ』

「ふはへはいへひょ!(ふざけないでよ!)」

『名前ちゃんがお利口さんやったら、何て言えばええか分かるやんな?』


ぶにぃーっと頬っぺたのお肉が潰れる音がして白石君の左手で掴まれた顔。白石君の右手はアタシの左手を離してくれてなくて、後ろフェンスという名の断崖絶壁。
いつもの白石君らしからぬ脅迫めいた姿勢に絶対謝るもんかって反抗心は芽生えたけど。


『うん?』


怒ってる様で、だけどやっぱり優婉を捨てきれない白石君の眼は綺麗で格好良くて。

(すき)

声にならなくても溢れた。
白石君に近付きたい、白石君に伝えたい、白石君が、欲しい。


『―――――』

「……………」

『――……ハァ、』

「、」


一瞬だけ瞠若を見せたら左手を緩めて溜息ひとつ。何、何で溜息なんか吐くの。


『名前ちゃん。そういうんあかんわ』

「え?」

『俺、名前ちゃんの頬っぺた掴んでたんやで?名前ちゃんはすっごい顔しとるしムードも無い』

「な、何それ!アタシが不細工だとでも、」

『ちゃーう。めっちゃ可愛いの間違いや』

「、」

『可愛い顔して可愛いこと言われたら参ってしまうやろ?それにな、』


男の台詞取らんで

ちょっと拗ねた顔を見るのは初めてだった。男やーって見せ場作りたかったっちゅう気持ち分からへんかなぁって。そんな常識、アタシからしてみれば非常識だってば。


「だって言いたかったんだもん」

『…せやったらもっ回言うて』

「え、」

『ちゃんと声に出して言って』

「……………」

『名前ちゃん、俺のんが好きや』

「あ、アタシの方が、好き、だもん…」

『んーん、絶対俺』

「―――――っ」


白石君の左手が頬っぺたから右手に移動して、指と指を絡めたのを合図みたいに口唇が合わさった。
いつの間に仕込んだの、突っ込みたいのは、白石君の口から飴が侵入してきたせい。今日の飴も、甘過ぎる。


(20100204)

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