コンビニで会うた彼女は化粧もせんと制服のままで、財布と携帯だけを握り締めて何を買いに来たんやろう、って。そう疑問はあったけど、声を上げて笑う彼女を見ればその疑問も一瞬消えた。
本当の彼女が、可愛いと思った。
dear.
bet.5 櫁恋
「なぁ謙也?」
『ん?』
「名前ちゃんて可愛いんやで。知っとった?」
『は?』
白石大丈夫か、そんな顔してこっちを映す謙也やけど謙也は知らんやろ?彼女の本当の顔。俺だけが知ってる彼女、それが優越で幸せ。(オサムちゃんは無いことにする)
昨日、あれからコンビニの駐車場で少し話しをした。俺が飴を買うたんを見て『それアタシの為?』って言うから勿論肯定をすると『じゃあアタシがコンビニ来た意味無かったね、だけどありがと』とか。あーなんや。それは俺が煙草の代わりに飴あげたから、飴買おうとしたっちゅうことで、これからも俺に飴をねだりたいっちゅうことやんな。不覚にも嬉し過ぎて、ニッと歯を見せて笑う彼女が可愛すぎて、赤面してしもた。
どないしよか思ったけど、何でやかつられた様に赤くなる彼女に安堵して、加えて好きやなって…実感した。
やって、めちゃくちゃ可愛いし。
『白石、どないしたんや?』
「、堪忍。浸ってしもてた」
『ええけど…本人居るで?』
「え?」
『白石君、おはよう』
余韻に浸ってるといつの間にか当人が居ったらしく、学校で(皆の前で)話し掛けてくるなんや珍しいと思ったけど飴の催促やと安易に分かった。ポケットに忍ばせた飴をひとつ取り出して、
「おはよう。名前ちゃん飴食べる?」
わざとらしく、せやけど謙也には悟られへん程度に自然を振る舞ったら、
『貰って良いの?有難う白石君』
「いーえ」
向こうも相変わらずな控え目の笑顔を見せた。ほんまはきっと『早くちょうだい』くらい思ってたんやろうけど、それも秘密めいた気がして楽しいんや。
『白石、俺には?』
「無い」
『うわ…俺等の友情てそない小っぽけやったんや…!』
「飴くらいでギャンギャン言う小さい男はモテへんで謙也?」
『大きなお世話や!』
しおらしく歩いて席に着く彼女を見て、今日もどんな1日になるんやろなぁとか意気揚々とする自分が擽ったい。ほんま、名前ちゃんで頭いっぱいや。
『っちゅうか話し戻すけど今更やん白石』
「は?何がや?」
『せ、せやから!名前がか、可愛いっちゅう話しや!』
「あー」
『白石は前から言うてたやんか』
「うーん。せやなぁ」
『何やついに惚れてしもたん?』
「うん。好き」
『っ、』
「愛してるなぁ、名前ちゃんのこと」
『っっ、』
謙也的には俺をからかう種にしようとしてたんやろうけどまだまだ甘いわ。素直な俺に、真っ赤になって怯むようやと負ける気せえへんで。
せやけどな、口にはせえへんけど謙也は間違うてる。俺が彼女を可愛いっちゅうたんは容姿含め、強がりな性格のことやから。意地っ張りでちょっと口が達者で、それやのに実は寂しがり屋で、男心が擽られるっちゅうこと、いつか話したるわ。
それまでは俺だけの彼女で居って欲しい。
(20091218)
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