dear. | ナノ


 


 04.



泣く、
そう言った白石君は真っ直ぐアタシを見て真っ直ぐな心を向けてくれた。

ドキッとしたとか、言わないけど。


dear.
bet.4 メーリング


口の中で転がせてた飴は、白石君と別れた後すぐに溶けて無くなった。帰り際吸いたかった筈の煙草なのに飴がある間は全然で、本気で禁煙出来るかもしれない。なんて思ったけど…


「えと、この辺に…」


今日持ってた煙草とライターは白石君に没収されたけどカゴの中に予備があったはず。飴の甘さが消えた途端無意識に手を伸ばす自分を見ればやっぱり禁煙なんか出来ないのかなぁって。

だけどその瞬間、携帯が着信音を響かせて手が止まった。


「まさか……」


メール受信しました
その言葉に浮かぶ人物はただ1人で、アドレスなんか教えてないのに、何で、何で。違う人かもしれない、だけどアタシは他の誰なんて思えなかった。

(白石です)
(俺が見てへんからってあかんよ?)

やっぱり。
絶対白石君だと思った。白石君じゃなきゃ嫌だって思った。


「っていうかタイミング良すぎー…」


本当に監視でもしてる訳?
悪態を浮かべて大袈裟に溜息吐いてみたけど煙草より先に返信画面を開くアタシって、無い。

(何でアドレス知ってるの?)

(オサムちゃんに聞いたんや。勝手にごめんな?)

(女の子の個人情報軽く見ないでよね)

顔は緩んでるくせに親指は可愛くないことばっかり。カチカチ音を立てながら、それでも本音だもんって、正反対な自分が2人居る。そんなの面倒臭いし自分でも良く分かんないけど、

(せやな。せやから俺だけでええんちゃう?)

(名前ちゃんの個人情報は俺だけで止めたら問題無いやろ?)

白石君とのメールを続けたいっていうのはどちらにも当てはまってるから。

(それも禁煙の為の言葉なの?)

(さぁ、それは秘密やねんで)

今は煙草より携帯を握り締めておこうと思う。それも秘密だけど。
あーあ、コンビニに飴でも買いに行こうかなぁ、そんなアタシも嫌いじゃない。だけどコンビニに行ったら白石君が飴をレジに持って行く姿があってアタシは思い切り笑ってやった。

馬鹿じゃん、アタシも白石君も。


(20091211)

蔵からメール(空メすると届きます)


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