dear. | ナノ


 


 11.



白石君ならどんな我が儘言ったって本当に叶えてくれそうで、アタシが逢いたいって言ったなら夜中でも朝でも昼でも絶対に飛んで来てくれるんだろうなって。

純粋に嬉しかった。素直に幸せだと思った。だけど…好きが増えるほど、きっと好きになるんじゃなかったって後悔する日も近いんだと思う。


dear.
bet.11 あのね。


「白石君、」

『うーん?』

「いい加減離れない?」

『それは名前ちゃんのお願いでも聞けへんかも』

「羞恥プレイだよ羞恥人蔵ノ介」


とりあえず休憩、なんてコンビニの駐車場の縁石に腰を降ろしたのも束の間。隣に座った白石君はアタシの腰をぎゅっと引き寄せて肩には頭まで乗っけてくる。
かれこれ5分、たった5分かもしれないけど人通りが多い場所にあるコンビニと言えば何人ものお客さんや業者の人が出入りする訳で。

迷惑極まりない行動に『これだから若い子は』とか『熱いね』とか『若いって良いなぁ』とか聞こえて来そうな勢いで視線を感じる。特に車の人から見れば邪魔で鬱陶しいこと間違いない。白石君にしては非常識な気がするけど、もしかするとアタシが白石君を無視しようとしてたから反動なのかなって。そう思うと無理矢理引き剥がすのも気が引けて、せめて悪口で抑えてあげたって言うのに。


『名前ちゃん』

「やっと動く気になった?」

『ちゃう。もっ回言うて』

「は?やっと動く気になった?」

『ちゃうちゃう!その前』

「羞恥プレイだよ?」

『その後!』

「羞恥人、蔵ノ介?」

『それや!』


相変わらず腰から手が離れることは無かったけど漸く頭は退いてくれて。だけど超ーっ至近距離で眼をキラキラさせてくるもんだから、な、何なのって…。


『初めて名前呼んでくれたんやな?』

「、名前っていうか…ただのあだ名っぽい悪口じゃんか…」

『それでもええねんて。名前ちゃんが白石君て呼んでくれるんも初々しい感じがして好きやねんけどやっぱり名前で呼ばれるんは絶品やなぁ』

「………………」


本当、何なの。
この人超可愛い。可愛いけど、そういう事ちゃんと照れずに言えるとこが格好良い。アタシだって、白石君に名前呼ばれるの、好きだもん。名前呼ばれるだけで『おいで』とか、『好き』とか、『こっち向いて』って、言われてるみたいな気分になる。白石君の声が甘くて、白石君の口調が柔らかいから。


『名前ちゃん?』

「…あのね、これからは名前で呼んでも良い?」

『え?』

「皆の前では、白石君て呼ぶけど2人の時は名前が良い」

『――――――』

「ってことで宜し――」

『これだけやと足りひんわ』

「、」

『今、外に居って良かったな?』


部屋やったら食べられとったで?

子供が悪戯した時みたく笑って無邪気な顔してるけど首に噛み付いといて良く言う。


『今日は名前ちゃんが特別可愛くなる日なんやろかー』

「て、ていうか蔵ノ介!蔵!」

『早速呼んでくれたんや、めっちゃ嬉しい』

「良いから聞いて!」

『はいはい?』

「い、言っとくけど3個じゃ足んないから!」

『、何の話しやっけ?』

「飴に決まってんじゃん!自分で3個渡しておいて何忘れてんの!もう老化始まってんじゃない!」


本当ならキスだってキスマークだって同じ、何て事ない、そう思いたかった。だから首に熱が行くのも勘違いだって平静を繕ってたのに。


『………………』

「………なによその顔」

『や、何でも、無い』

「、むかつく!!」


なのに蔵は笑いを堪えるのに必死で、堪えきれなくて息だけで笑ってて、仕舞いには『ほんま照れ屋さんやなぁ?』だとか。
本当本っっ当、超むかつくんだから!むかつく人には、キスマークが初めてだなんて教えてあげない。


(20100313)

蔵からメール(空メすると届きます)


prevnext



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -