06.
口を開ければ
放り込まれる愛?
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lb.6 幸せの黄色
「し、白石君も財前君も、自分の分が無くなっちゃうよ…」
そりゃあね、2人からあーんなんて美味しい状況ずっと堪能しちゃいけど。どっちか選びなさいとかそんな雰囲気その笑顔居たたまれないったらない。
勿論個人的な希望としてはこのまま交互に右は白石君のあーん、左は財前君のあーんで幸せを満喫させて頂きたいんだけど…それじゃ駄目?
『俺は、名前ちゃんの分も量プラスして作ってるから大丈夫やで?』
『っちゅうか今から購買行っても売り切れや思いますわ。もう15分経ってんねんで』
「え、もう白ご飯しか売ってない時間…」
『せやったら決まりやな、名前ちゃんは俺等に分けて貰わなお昼が無いっちゅうことや』
「で、でも…」
そんなの悪いよ、なんて言いながらアタシのお腹は極限を語ってる訳。辛うじて2人の前で嫌な音が鳴らないだけマシだけど気を緩めたらやばいくらいスタンバイオッケー、みたいな。
だからさ、やっぱり白石君と財前君が順番でアタシに食べさせてくれたら…一番だと思いやしませんか!とりあえずアタシはそれで超幸せだし!
『しゃーないなぁ…あんまり名前ちゃん困らせて嫌われてしもたらあかんし』
『なんすか』
『半分ずつやな』
『…ま、しゃーないな』
『っちゅう訳で俺からやな、名前ちゃんあーんしてくれる?』
「え、」
『俺が、名前ちゃんの右手になったるから』
「っ、」
わざとらしく耳の側で囁かれたら余計な妄想までさせられて心拍数は面白いくらい上がってく。ドキドキドキドキ煩くて、きっとまた顔も赤くなって、下手したら朝の延長で体調不良再びになっちゃう。
『なんなら俺はそれ以上んなったりますけど?』
「っっ、」
分かっててやってる?言いたくなるくらい確信犯めいた2人に心臓は本気で可笑しくなっちゃいそうで。勘違いの体調不良も全部、全部が全部2人のせいなんだから!
(アタシ、こんなウブで純情じゃ無かった筈なのに…!)
『名前ちゃん?』
「、」
『どないしたん?また体調悪くなったん?』
「ち、ちが、」
『あー、此処寒いしなぁ…分かったちょう待って』
結局また勘違いしちゃうの!
一先ずお箸を置いた白石君に心中「違うから大丈夫だから関西人でもそんなボケは要らないから」って突っ込むと隣の財前君はフッと小さく吹き出して。
「な、なに?」
『別に?朝も今もコロコロコロコロ変顔なんねんなって』
「変、顔…!」
『大丈夫すわ、男が好きな顔やから』
「!」
半ば無理矢理ねじ込まれたパンはチョコレートの味で舌を包んで、財前君の甘さと2乗して溶けそうな気分だった。
『はい名前ちゃん』
「え?」
『うん、そのゆるゆるさが愛しくなるわ』
財前君に続いてロッカーを漁ってた白石君が戻って来ると黄色いジャージが降ってきて、今度は白石君の匂いでいっぱいになる。
財前君とは違う、きつくない程度に薫る甘い匂いが、熱をもっともっと上げてくれそうな気がして…白石君らしい甘さに酔っちゃいそうなのに、
「し、白石君ありがとう…」
『ええよ。せやけど』
「、」
『このまま俺のものになる気無い?』
「ぶっっ!!」
『ハハッ、なんてな?名前ちゃんが可愛くてつい』
「つい、とか…」
パンを噴き出してしまいそうな破壊力には冷静に薫りを堪能してる場合でもない。幻のイケメンジャージを着たまま白石君のものに、なんて美味しいの一言だけじゃ済まされないくらい幸せだって…!なんちゃってでも何でもフワフワしたピンクの世界に連れて行かれる。
『まぁ、』
まるっきり冗談でも無いねんで?
付け足して言ってくれたみたいに聞こえたけどアタシの頭では幸せの鐘の音が鳴り響いた。
(これぞ青春ですよね!白石君!財前君!)
(20100310)
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