05.
口を開ければ
放り込まれる愛?
love beta
lb.5 開けらんない!
イケメン2人から白昼堂々のお呼びだし。まさかあんな風に校内放送を使われると思わなかったし、それ以前にアタシを呼び出すってあり得なくない…!用事があるなら教室に来てくれたりするんだろうし何…!
恥ずかしいのは勿論だけど、いつかアタシ刺されそうな気がする。だって白石君と財前君、本当モテるし熱狂的過ぎる子だって居るらしいんだもん。恋って全てを盲目にさせるんだからそういう意味では怖いったら。
「…っていうか、本当にテニス部で良いんだよね?」
期待しちゃってるばっかりに何があるの何が始まるのって、ドキドキし過ぎて酸素足んなくなってきたけど、これでもし部室行って誰も居ないとかなったら……アタシ何人の人に笑われるんだろ…。そんな白石君と財前君に限って意地の悪い事無いって信じてるけど!だけどこうもトントン拍子だと疑心も深まるっていうか。アタシって可愛かったんだ、だけじゃ終わんない気がしてくるのも普通な心理だよね。
「……白石君と財前君、居ますか…?」
控え目に、小さく小さくノックを2回してみるけど中から声なんか聞こえてきやしない。
やっばい。アタシ本当にからかわれただけだった?5分前までは儚い夢を見せてくれただけだったの?
そんなの笑えない、口元が引きつった瞬間、肩にはポンポンと振り返るように催促する力が加わって。
「え――――、」
素直に首を捻ると白石君の笑った顔が見えて、頬っぺたに何かが刺さる感じ。
あ、あれだ。よくあるあれ。刺さったの白石君の人差し指じゃん。うん?白石君の、人差し指?
「ええ!?」
『アハハッ、そんな驚いてくれたとか俺もビックリやで』
「だ、だって…」
白石君の綺麗な指がアタシのガサガサな肌に触れるとか申し訳ない。(初めてではないけど!)
それに騙されたとかからかわれたとか色んな事考えちゃった分、本当に居るとは…嬉し過ぎるじゃんか!
『あー、何で部室に居てへんのってこと?』
「え、あ、う、うん」
『俺もスーパーマンちゃうからなぁ、放送室からここまで移動の時間が要るやろ?』
「、そっか」
なんだ、だからノックしても返事無かったんだ。考えてみればそりゃそうだよねーなんて調子乗ってると『せやけど早く名前ちゃんに会いたくて走って来たんやで?』とか。そんな事言われちゃったら逆に調子乗ってごめんなさいって謝りたくなる。白石君てば女心理解し過ぎ。
『でー、名前ちゃん』
「、はいっ」
『お昼ご飯は?』
「あ、今日は購買で何か買おうと思ってたから…」
『何も無い?』
「う、うん…」
『せやったら一緒に食べよな?』
「へ?」
一緒に、ってお昼を一緒に食べたいから呼ばれたってこと?そうだとしても購買に行かなきゃアタシのお昼ご飯は無いんだけど…?
『名前ちゃんはココに座ろか』
「あ、はぁ」
『ほんま嬉しいなぁ』
「、嬉しい?」
『うん。一緒にご飯食べられるんやで?』
ご飯が無いのもお構い無しに白石君は部室へと招いて、椅子に座らされると自分のお弁当箱を広げてく。否応なしにソレを見てると少し大きめのお弁当箱に白石君は満足な顔で綻んで。(格好良いよ普通に…!)
『名前ちゃんの為に作って来たから良かったわ』
「あ、アタシの為?」
『せやでー、料理は心掴みやすいやろ?俺の作戦』
「……………」
白石君、アタシに料理作ってくれるだなんて…普通逆やろ!って突っ込みが入って来そうな気がするけどそんなのどうでも良いし幸せ…!
何にしても転機っていうアタシの時代に間違いないんだよね…あはっアハハッどうしたら良いのーっ!!
『部長、勝手な事ばっか言うん止めて貰えます?』
「あ、財前君」
机か自分の足か、バシバシ引っ叩きたい衝動を飲み込んで大人しく脳内だけで浮かれてるとアタシを呼んだもう1人の登場。
白いビニール袋を提げてるあたり財前君は購買のパンを買って来たんだろう。だけど問題はそこじゃなくて。
『なぁ、名前先輩もパンが食べたいやろ?』
「え、」
『こーら。名前ちゃんはお弁当食べる言うたんやで財前。気利かせて屋上にでも行ったんか思ったのに』
『こっちの台詞ですわー。っちゅう訳でパンすよね?』
『やっぱりご飯やんなぁ?』
「え、えっと、」
『ん』
『はいどうぞ』
「あー……」
2人からパンとご飯を持ってこられて、どうしろって言うの…!
財前君の匂いは今もアタシを燻るし、白石君の体温だってアタシを燻るし、こんな贅沢な選択、アタシには出来ません!(白石君!財前君!いっそ2人両方を選びたいんですけど)
(20100222)
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