03.
溢れるドキドキ、
夢心地な淡い光り
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lb.3 漂った香水
半ば無理矢理連れて来られた保健室、財前君の肩からベッドへ降ろされると何処かの宮殿に居るくらいの気分だった。シャンデリアがある訳じゃないし、クイーンサイズのベッドなんか無いし、薬品の匂いが鼻を刺す狭い部屋なのに。
『名前ちゃん、少し寝て体調良くならへんかったら今日は帰るんやで?』
『とりあえず寝たらええですわ』
だけど白石君と財前君がそこに居るだけで世界は華やかになって、平凡なアタシでもシンデレラになった様な、そんな気にさせてくれる。
「あの、白石君も財前君も、ごめんね…有難う」
『、ごめん、て?』
「えっと、迷惑かけちゃったし…」
『あーせやなぁ』
「、」
『せやけど俺は迷惑なんや思ってへんし、名前ちゃんが調子悪いん1番に気付けて嬉しいねんで?』
「―――――」
『せやから、もし名前ちゃんが悪いと思ったなら早よ元気になって、俺と色んな話ししてくれへんかな?』
名前ちゃんの話し、何でも聞きたいねん
肩まで布団を掛けてくれる白石君を見たら王子って表現するのも申し訳ないくらい、それ以上に格好良くて。アタシの心拍数は面白いくらい上がってた。
やばい、息するのも辛いくらい心臓が煩くて眉間がツーンとする。もうこれも全部白石君が良い男過ぎるせいなんだから…アタシ本当は別に体調だって悪くないのに!
『ま、とっとと寝て下さい。そんな顔してたらどうにもなりませんわ』
惚けてた顔が財前君から見たらどう映ったのかは知らないけど、おでこを軽く叩いた瞬間漂った財前君の薫りがまたアタシを刺激をする。
『おやすみ、名前ちゃん』
「おやすみ、なさい…」
カーテンを静かに閉じて保健室を出て行った2人を確認してハァ、と大きな溜息をひとつ。
「こんな興奮してるのに寝れる訳ないじゃんか…!!」
白石君は優しくて甘い言葉ばっか言ってドキドキさせるし、財前君はアタシを抱えてくれたり顔(おでこだけど)に触れてきたり…眠るどころか眼がギンギン冴えちゃってるって話し。
大体2人共、心配性なんじゃない?知り合ったばっかりの、顔を見知ったくらいのアタシなんかにそんな優しくしてどうすんの……、やっぱりアタシに気があるとしか思えないし…でもそんな意識して貰えるようなことしてないし、容姿だって特別に良い訳じゃない。だけど実はめちゃくちゃ可愛いとか?やっだもう!照れちゃうんだけど!
「……あ、財前君の薫り、」
脳内で好き勝手な思考を巡らせてると制服の袖からは微かに、さっきと同じ甘い匂い。抱えられた間に付いたの?そんなにキツい訳じゃないのに、それだけ近くに居たってこと、じゃんね…駄目、思い出しただけで恥ずかしい。
でも、この匂い好きかも。
袖を鼻に引っ付けて眼を綴じると居心地の良い世界へ誘惑されるみたいで、気付いた時には夢の中だった。
「……んん、」
『あー起きたんです?』
「え………、ざ、ざ、財前君っ!?」
『なんやねんドッキリ仕掛けられた時みたいな反応』
「だ、だだだって、ビックリするよ…」
まさか本当に寝るなんて単純な奴、そうは思いたくとも目覚め1番に視界の中心が財前君が居たとか、そんな余裕は全く無い。
ベッドに腰を掛けて携帯をカチカチ打ってる姿は美麗過ぎて脳を覚醒させるには持ってこい、みたいな。膝組んで座ってるだけなのにこの空気は…本当に凄い…っていうか!
「まさか財前君、あれから戻って来てくれたの…?」
『え?』
「1回出て行ったじゃん、だけど…」
直ぐに戻って来てくれた?
ずっと一緒に居てくれた?
それすら都合良すぎる思い込みだけど、
『ずっと此処に居って欲しかったんです?』
「、」
『名前先輩が良いように解釈したらええですわ』
今度はおでこを人差し指で押して来て、優越な顔して笑ってくるからやっぱり動悸は激しくなる。
『なぁ先輩、ソレって熱のせいやなくて俺のせいやったりするん?』
「っ、」
相変わらず赤くなる顔を面白そうに見てくるのが羞恥で仕方なくて。隠す様に口元を手で押さえると、さっきより全然強くなった財前君の薫りが鼻の奥へ届いた。
嘘、でしょ?
匂いって消えることがあっても強まることなんか無いのに。財前君、アタシの手、握ってくれてた、とか…?
『ククッ、その顔待ち受けにしたりますわー』
「ちょ、ちょ、何撮ってんの…!!」
『部長に自慢したりますよって』
「止めて、お願い、そんな変な顔消して!!」
『そんだけ元気っちゅうことはやっぱ熱のせいちゃうんや?』
「、からかわないでよ…!」
ドキドキし過ぎて頭が痛い、だけどこの頭痛は全然苦じゃなくて楽しくて幸せだとか。どんどん侵食されてる気分。(寧ろもっとお願いしたいです!財前君!白石君!)
(20100105)
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