R17 | ナノ


 


 08.



また明日、
約束はあっても何かが足りない


R17
desire.8 苦しい、楽しい、切ない


「ひかるひかるひかるーっ!!」


何でか、携帯のアラームより30分前に眼が覚めたアタシはベッドに潜ったまま発信ボタンを押した。いつもは眠くて眠くて眠くて、後5分とか後3分とかギリギリまで少しでも寝ようって眼を閉じるのに今日は頭がスッキリしてる。全然眠くない。


《………早ない?》

「おーはーよっ!光!」

《…………………》

「朝一番の挨拶が聞こえませんが」

《おやすみ》

「何で!早く起きて早く支度して早く迎えに来て!」

《テンション高過ぎなんやけど》

「普通普通っ」


機械を通して聞こえて来る欠伸が何となく嬉しくて。昨日凹んでた自分が馬鹿みたく不思議に思える。


「起きた?もう出れる?」

《今から顔洗うんやけど》

「まだ洗ってないの!遅くない?」

《今起きたとこなん知ってて言う台詞ちゃうと思いますわ》

「だってー…」

《あと20分もあればそっちに着くんで大人しく待っといて下さい》

「え、まさか電話切るの?」

《、繋いだままでおれって言うん?》

「うん切りたくない」

《……今日の先輩、超我儘》


ま、そんくらいがちょうどええけど
その言葉と一緒に階段を降りる足音が聞こえた。今目の前に光は居ないし離れた場所に居るけど。足音ひとつ、水道からの水音ひとつ、それを聞いてるだけで直ぐ傍に居るような気がして。
枕を抱き締めては光の冷たい肌を思い出してた。

昨日は、あんなに光が遠くに行った錯覚起こしたのにどうしちゃったんだろアタシ。家に帰って、彼氏からは相変わらず連絡無くて少しだけ光とメールして。『ふーん』とか『さあ?』とか超簡単な一言とも言えない返信だったけどそれでも嬉しくて。
素っ気ないメールだとしとも繋ぎ止めることに必死だった。図書室で感じた簫簫さを思い出したくなかったから。

光と対等で居たい、光と並んでたい。
その執念だけで息をしてた。なのに今日は、電話して、いつもと変わらない光の声を聞いて、安堵してる自分が居る。すっごい、安穏な感じ。


《顔洗って歯磨き済ませたんで今から着替えてそっち行きますわ》

「じゃあアタシも着替える!」

《はぁ?人に催促しといて自分はまだ支度してへんの?》

「光と同じ時に同じ事しようかなぁって」

《何やねんソレ》

「ね、何から着替えるの?ズボンシャツ?」

《シャツやろ》

「じゃあアタシも!」


抱いたままだった枕を置いて立ち上がれば、携帯を耳に挟んで器用にスエットの上を脱いだ。


「光ー、脱いだ」

《………………》

「今からシャツ着ます」

《何の実況すか》

「アタシのナマ着替え?」

《名前先輩朝から盛ってるん?》

「あれ、そっち行っちゃう?」

《ちゃうんです?逐一変態発言するもんやからてっきり》

「変態発言はしたつもりないけど!想像にお任せします」


光に抱かれたい
その願望は勿論ある。昨日の最中は光に触れられてる箇所が全部愛しくて幸せだったから。

だけど…あれは抱かれた、とは言えないのかもしれない。単なる性のお遊びなのかも、しれない。


「光、着替え終わった…」

《、急にトーン下がったけど》

「……早く、会いたい」

《………………》

「光が見たい…」

《……5分で行ったりますわ》

「うん…」


時計の針を操作して今すぐ5分後になれば良い。たった5分が1時間くらい長く思えたアタシは、また少し、あの黯然を思い出して俯いた。

切ないって、今のアタシに当て嵌まるの?
楽しい、だけで十分なのに。



(20100305)


prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -