R17 | ナノ


 


 07.



眼を瞑ると寂しくなる、
眼を開けても愁える、


R17
desire.7 ハーフハーフ


『名前先輩帰りますよって』

「あ、うん」


シャツの隙間から見える肌以外、違う肌色を見せなかった光は何も無かったみたいな顔で学ランを羽織った。中途半端な制服のアタシは光の平静さを見て厭に躁急を感じた。


『なんや、もしかして足りひんかったん?』

「、」

『先輩って慾強いんすねー』

「……………」

『心配しやんでも明日、部活終わったら相手したりますよ』


帰るで、柄にも無くマフラーを捲いてくれる光が別人みたいで。
どーぞ、繋がれた手なのにさっきより遠くに感じる。


「…ひかる、」

『なんすかー』

「光って、アタシが嫌いなの?」

『嫌いって言うて欲しいん?』

「…やだ」

『クックッ、好きすわ結構、そういうとこ含めて』

「ぐえっ!く、苦しいじゃん馬鹿光…」

『そらすんません』


結構好きって、今までも何回か言われたことある。マフラーをぎゅっと引っ張って首を締め付けてくるみたいな意地悪な冗談も、それにウケて笑う顔も何度だって見たことあるし、いつも通りな光だった。

だけどこんなに距離を感じるのは初めてで、光が遠くて仕方ない。光が言う様にアタシの欲求は大きいのかもしれないけど、そんなの光のせいじゃん…。光がアタシを抱いてくれなかったから。ううん、何もしてくれなかったんじゃなくて、アタシだけ一方的に良い思いして光に返せてない。

今まで誰かとの情事後は100%じゃなくともちゃんと満たされてたのに全然満たされない。アタシはそうだけど、光は満足したから笑ってるの?


『名前先輩』

「、何」

『たい焼き買って帰りません?』

「た、たい焼き?」

『“運動”して腹減ったんで』

「…その言い方止めない」

『不満なん?嘘は言うてへんのに』

「、別に良いですもう!」

『やろ?』

「やろ、じゃないよ!」

『そんなカリカリせんといて下さいって奢ったるんで』

「当たり前じゃん」


つぶあんが入った、普通より二回りくらい大きな白いたい焼きを半分ことかどんだけ仲良いのって感じ。
光が噛ってアタシが噛って、しかも光が左手で食べさせてくれる。『あんこ付いてますけど』なんて下口唇を無駄に厭らしく舐められて、多分彼氏と居るより馬鹿ップルぽくて暑苦しい。


「光、明日迎え来て…」

『性欲ん次は甘えたぶりっこですー?』

「うん」

『名前先輩がチューしてくれるならええすよ』

「するするする!」

『、ヤル気満々やん。頬っぺたなんは気に入らんけどしゃーないすわ』

「じゃあ来てくれる?」

『そん代わり朝起こして下さいね電話で』

「分かりましたっ」


楽しい、光と一緒に居ると本当馬鹿みたいで超楽しい。なのに…、


「また明日ね、光」

『はいはい』

「ばいばい」

『ん、ほな』

「………………」


何で寂しさは消えないの。
何で切なくなるの。
何で、不安になるの…。

小さくなってく光の背中を見ながら、蔵の言葉を思い出して触れられた下口唇を噛むしか出来なかった。

(後悔したらあかんで?)

そんなのしてないもん…。



(20100223)


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