繋がったのは電波だけで
身体も心も―、
R17
desire.9 ピンクに染まる
着いた、携帯を通じてそれが聞こえると鞄を抱えて部屋を飛び出した。
「ひかる!」
『、大袈裟な女』
ダルそうな顔したいつも通りな光が見えた途端、長かった5分を型取るみたく飛び込んで。1日ぶりの光が、身体も匂いも愛しくなる。
『1ヶ月も1年も会うて無かった訳ちゃうのに』
「アタシにとっては10年だったの!」
『なんや面倒臭さが割増しとる気がするんやけど』
「女の子の可愛い特権ですね」
『そうすかーっちゅうか電話切ってええです?』
流石にもう目の前に居るんだから、そう言いたそうに首を掻く光を見たら素直にうんって言いたくない。
「いーやーだーやだやだー」
『は?』
「携帯電話はアタシと光、電話が繋がってると心が繋がってるーって感じ?って、ちょっと!超良い事言ったのに何勝手に切ってんの!」
『自分に酔い痴れとるポエマーが居るんか思たら名前先輩やったん?うわー引きますわー』
「ひ、引くって酷くない…」
『ククッ、冗談はええんで行きますよって』
今日も皮肉は健在で、冗談の様で冗談じゃないアタシの言葉にだって悪態で返されてちょっとムッと来たけど、光から絡めてきた手は珍しく暖かくて心無し口元も笑ってたからそれだけで満たされるような気がした。
「ね、光」
『なん?』
「何処行くの?学校と方向違うけど」
『それ聞くんです?野暮な人ー』
「、まさか?」
『そのまさかで合ってると思いますわ』
光ってば学校サボってまで朝からどんだけ盛ってんの、ぎゅっと指に力を入れて言ってやると頭を叩かれてアタシのせいだなんて人に責任押し付けちゃってさ。
でも、光も光で左手に力を入れてくれたから幸せだ、なんて思えた。光って意地悪だけど優しい。そういうとこが凄い好き。
『光?何してるの?』
まさかの言葉通り、ラブホへ向かうと光は直ぐに風呂場へ入っていった。後ろから覗き込むとピンクの色したボトルを片手に浴槽へとお湯と一緒に流し入れてアタシを視界に入れるなりニヒルな笑顔を向けてくる。
『ローション風呂っちゅうやつすわ』
「え、ローションて透明じゃなかったっけ」
『ムードん為に着色料入れてくれてるんやろ』
「それ説明したらムード無いじゃん」
『名前先輩にはムードなんや関係無いやろ?』
「ど、どういう意味よ」
『分かっとることは一々口にしませんよって』
なに、つまりはアタシがムードなんか関係無く行為に没頭出来る変態だとでも言いたい訳?
い、言っとくけど誰にでもそういう訳じゃないんだから。別に脚を開くくらい容易だけど本当に本気になれるのは、光だから。って、これじゃアタシが光の事好きみたいじゃん!や、好きは好きだけど別にそんな………
『何百面相してるんです?それも一種の顔芸なん?』
「ち、違うし!ひ、ひかるが変態だって思ってただけだし!」
『はいはい、変態な名前先輩の為にボディーソープにも混ぜとったりますから安心して下さい』
「どんな安心なの…!」
肩を揺らして笑う光が男の顔に変わるまで間は無くて、今日もアタシはがむしゃらに光を感じた。
光が欲しくて仕方ないのに昨日と変わらず終了を迎えた事、確かにアタシは心臓が痛かった。
光は、何を求めて何がしたいのか、アタシには分からない。
(100413)
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