冷たい身体に反応するのは
自分の身体が暖かいから
R17
desire.6 冷たい手、冷たい舌
家とは違う学校の教室と同じドアの鍵がカチャンと音を鳴らせば部屋にはアタシと光2人きりで、本に囲まれては静寂に支配される。
だけど沈黙は苦しくなくて、光に見られてることが優越みたいに嬉しかった。
『どないするんです?』
「、それ聞くの?図書室に移動したんだから分かるじゃん…っていうか光が言ったのに」
『名前先輩の口から聞きたいんやけど』
「や、やだ」
『ほな帰りますー?このまま何もせんと』
「それも、やだ…」
『言うんです?帰るんです?』
学ランを第三ボタンまで開けて、怠く着こなしたカッターシャツの下から見えるのは光の鎖骨。くっきり象る形は妖艶過ぎて触りたく、なる。恥ずかしいなんていう気持ちすら棄てたくて。
「…続き、したい」
『続き、なぁ』
「、ダメ?」
『今日の先輩ツボなんでそれで許したりますわ』
「ツボって―――っ、」
彼氏じゃない、他の人に懇願するってアタシ可笑しいの?そんなに慾が張ってるの?
彼氏にすら“お願い”したことないのにアタシって別な意味で凄い女なのかな、何処か冷静にそんな事考えてると思い切り眼を細めて口角を上げた顔が見えた途端、口唇が重なって引っ掻かれた舌をなぞられる。厭らしく、わざとゆっくり舌と舌を擦り合わせてくる光に背中も腕もゾクゾク鳥肌が立って。制服のボタンが外れる音が聞こえたらもう、余計な事は脳内から消そうと思った。
今は、光に時間を委ねたい。
『名前先輩』
「な、なに」
『そのまま立ってられます?』
「え、」
『ベッドか布団があれば横になれるんすけど生憎下は硬い硬い床か机ですわ』
「んっ、光が、支えてくれれば、良いじゃん…」
『名前先輩が軽かったら大丈夫やねんけど』
「失礼、だから…あっ」
耳から首、首から鎖骨、舌が滑ってく場所が逐一良くて、水分を含んだばっかりに空気がヒンヤリ当たるのが焦れったい。
『フーン。意外と小さいんや』
「さっきから本当に失礼過ぎ、っ!!」
『いい加減黙って下さい』
「んんーっ!」
ブレザーもカッターもボタンは開いて呆気なく晒された肌を見るなりこの一言って何?そりゃ『綺麗な肌や』とか『美しいわ』とか言われても気持ち悪いけど。さっきから体重は重いだとか胸は小さいだとか皮肉は忘れません、みたいなとこに当然引っ掛かって反抗してやりたいのに光の左手がアタシの口を押さえ付ける。
黙って下さいだってこっちの台詞なのに、何でアタシがムード打ち壊してるみたいな扱いになってんの…全部光のせいじゃん、その思いを込めて睨んでやると、
『もっと素直な反応希望なんですけどー』
「、」
今度は面白そう顔して口内へ指が入ってくる。アタシは苦しくて仕方なくて、だけど光の右手は器用に身体を撫でて。
初めての衝動に脳が付いてくのが精一杯だった。息苦しくて、だけど心地よくて、このまま理性も何もかも無くなっちゃえば良い。
そうは思ったけど。
「………………」
最後まで光が制服を棄てることはなかった。
(20100211)
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