腹が立つほどに愛しい、
愛しくて、腹が立つ
R17
desire.2 耳に刺さる八重歯
「……ん、」
カラン、音を立てて落ちた筈のコーヒーの缶はいつ地に転がったのも分からなくて。それくらい、光を夢中で感じてた。
優しくない、全然優しくないのにもっとして欲しいって、酸素を求む時間すら惜しい。
『毎日お盛んな割には“足りひん”て感じやけど?』
「……良いから、もっと」
『フーン?彼氏とは違う男、初めてで興奮して来たんです?』
「ち、違うもん!」
『せやったら彼氏が下手とか?』
「…本当に性格悪い、」
正直言うと彼氏じゃない違う男っていう状況にアタシの慾は掻き立てられてる。キスだけじゃ全然満たされない、もっともっとって思う自分が居る。
彼氏が下手かと言われたらそういう訳でも無いけど、彼氏以外の男を知らないかと言えばそれも違うけど…光が良いって思ってる、かもしんない。
『名前先輩、俺は全然ええんやけど此処でこれ以上はマズイんちゃいます?』
「え、」
『此処、屋上やで?それともそういう趣味?』
こんな話し要らないから、そうは思ったけど現実に戻されるみたいな感覚になったのは光のせい。
学校だから、屋上だから、誰が来るかも分からないし誰が見てるかも分からない。それでも良いのか、そう言われたら途端羞恥心が溢れた。
『うわ、あっか』
「ひ、光が変なこと、言うから…!」
『変?何が変なんです?』
「っ、」
耳を噛んで甘い声を出されたらもう。だけど悔しい。鳥肌が立つ気持ち良さだって、どうせ分かってるんだ。光がどうしたら、アタシがどうするのか、全部分かってなんて悔し過ぎる。
『早よ言うて下さい』
「……、光が、こんなところでヤるのかって…言うから…」
『それが変、っちゅうこと?』
「へ、変じゃん…何かアタシの事、勘違いしてない…?」
『ほな我慢出来ます?』
アタシにだって理性くらいあるもん。反抗したいのに光の舌は耳からうなじへと下りて来て、襟から無理矢理手を突っ込んだ手がヒンヤリと肩まで刺激する。
我慢、出来ない。
「ひかる…場所変えたい…」
『ククッ、先輩のそういう素直とこ嫌いやないスわ』
あくまでニヒルな口角を崩さない光に腹が立つけど、冷えた肩も首も耳も、全身が光に来てって言ってて。それを抑圧する力をアタシは知らなかった。
光、光、
今は欲求の解消で良いからアタシを満足させて欲しい。
(20091208)
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