R17 | ナノ


 


 01.



好き?嫌い?
そんなことどうでもいい


R17
desire.1 コーヒー味の舌


今日会えない

3日連続で来たメールは同じ台詞で、分かったなんて送ってもそれ以上続く文章は無かった。


「はぁ…」


溜息ばっかり溢れて膝を抱えてみたってこの現状が変わるはずもないのに。孤独感というか悔しい気持ちでいっぱいになる。
だってそうでしょ?明らかに分かる浮気の気配、他の誰かに彼氏を取られてるんだっていう事実は女としてのプライドを傷付けられてるんだもん。
哀しいより腹が立つだとか、アタシも大概可笑しいのかもしんない。


『負け犬』

「、」

『みたいな顔してますけど?』

「……………」


そんなアタシをせせら笑いに来た生意気な後輩もどうかしてる。
普通はそこで『大丈夫?』とか『どうしたの?』くらい言うとこじゃないの。


「光って性格悪いよね、」

『良いって言われる方が多いんやけど?』

「えー、それ逆の意味じゃん?」

『どっちでもええすわ』


クックッ、喉で笑いながら手に持ってた缶コーヒーを開けるなりグッと一口。
ちょっとちょっと、アタシに持って来てくれたのかと思ったのに自分で飲むってどういうこと?優しさの欠片も無くてビックリするんですけど!


『で?』

「何、」

『ついに彼氏にフラれたんです?』


慰めるどころか人の不幸は自分の幸せみたいに嬉しそうな顔してる光が超ムカつく。


「フラれてません。アタシ達超ラブラブだし」

『へぇ?』

「毎日毎日お盛んで困ってるし?」


本当は全然なのに、会うことも連絡だって無いに等しいのに。光の憎たらしい顔見てると見栄張っちゃうってね、結構虚しい。素直にフラれそう、慰めてって言える口があれば少しは可愛い女の子になれるのかな?でも相手が光だとね、結局馬鹿にされるだけかもしれないけど。


『フーン。フラれたんなら慰めたろ思ったのに』

「え、」

『ん』

「……………」


あと一口くらいしか入ってない缶コーヒーを渡されて、心なし、さっきより皮肉さをマイナスされた笑顔からは“本気”が伝う。
まさか、光が本当に慰めてくれるって?


「光…慰めるって、何て言ってくれるつもりだったの…?」

『は?要らんのちゃうん?』

「だ、だから、例えば!」

『何てって、おめでとう』

「……おめでとう?間違ってない?」

『ククッ、フラれ記念日やろ?』


どこまでもふざけてる。
フラれた日におめでとうなんて言われて喜ぶ女の子が何処に居るんだって話し。期待したアタシが馬鹿だった、そう思って最後の一口を飲み干すと、


『俺、不器用なんで身体で慰めるタイプなんですわ』

「は、――――」


光の生々しい言葉と合う様に口の中へと入り込んだコーヒー味の舌。


『名前先輩、俺欲求不満なんやけど』


ニヤリと含み笑いを向けられたら、アタシも負けず劣らずコーヒー味を光に押し付けた。

とりあえず今は、嫋嫋の中で光に流されたい。


(20091202)


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