霧に包まれて
貴方を探す、
R17
desire.11 罪を背負う
あんなに近くに居た光が遠くなって、触れてくれた指はもう何処にもなくて、ただ離れてく光の背中を浮かべては狂ったみたいに涙が零れた。
アタシはどうすれば良かったの?
あのまま彼氏と関係を続けていたら良かった?黙って光と関係を続けてたら良かった?
寧ろ、光に出逢わなかったら、良かったのに…。
『名前、もう授業始まる――、』
「ごめん蔵、今度こそ触れないで」
『………………』
昼休み、1時間もずっと泣けば必然的に涙も枯れて眼が赤く染まった。そんなアタシに瞠若した蔵は流石に声を詰まらせて黙ってたけど、良いんだ。蔵に優しくされたらきっとまた泣いちゃうから。
これが、調子に乗ってたアタシの罰だから。
全部上手くこなすなんて無理だったのに、余計なものまで望んじゃったから、だからね、哀しいけど辛いけど、これが運命だって受け止めるよアタシ。
『名前!お前今日何――……』
『謙也、さっさと席着き!授業始まるって』
『お、おう…』
謙也も相変わらず元気な顔で来てくれたのにアタシの顔を見るなり固まっちゃってさ。なに、アタシそんな酷い顔してる?眉間にシワ作らなきゃなんなくらい酷い?
鏡を向けると腫れぼったい瞼と乾ききらない睫毛がホラーみたく本当に怖い顔を作ってた。
変な顔、思わず笑っちゃったのに、笑えてない顔がまた光を思い出させた。もう光の体温を感じることは出来ないんだ…。
授業も頭に入らないアタシはただ、光を想って哀愁を募らせるだけだった。
『名前!』
「、蔵?」
『今日、ご飯でもどうや?』
放課後、黙って教室を出て行ったアタシを追い掛けて来てくれたんだろう蔵は肩で息をしてて。やっぱりアタシを心配してくれてんじゃん、蔵の優しさが窮屈な胸を満たしてくれる、気分。
「ありがとう、今日は真っ直ぐ家に帰ろうと思って」
『そ、か』
「ごめんね、じゃあ『名前』」
「―――…………」
右手を振って足を一歩出した瞬間、蔵とは違う、懐かしい声。
この声、まさか……、
『それが新しい男?』
何日ぶりに会ったんだろう。さっき別れた筈の彼氏が、不機嫌を隠さないで校門の側でしゃがんでた。何で……?
「ち、違うよ…」
『フーン。ちょっと来て話しあるから』
「う、ん…」
『名前、』
「ごめん、大丈夫だから蔵…」
『……………』
憂愁いっぱいな眼はどんな心配してるの?アタシが元サヤになること?それとも馬鹿な事言わないかって?
一度は好きになった人だもん。酷い人じゃないし、アタシは光が好きだから。だから大丈夫だよ、今度こそちゃんと笑顔を作って蔵に返した。
(20100423)
←