11.
結局、お騒がせカップル基、白石と名前は何事も無かったみたいに2人仲良くお昼を過ごしてた。俺も俺で相変わらず教室から2人を眺めるだけで何も変わらへん。
仲直りして欲しいって思ったんやってほんまやし、実際名前に白石を頼んだのも俺自身や。せやけど何で…こんなモヤモヤするんやろ。2人が向き合って笑ってるのを見ると、心臓がズキズキ疼いてた。
「、」
そして放課後、昨日と同じ場所でフェンスにへばりついてる名前は白石ばっか見てて。また、心臓が痛い。
「毎日ご苦労さんやな」
『あ、忍足君』
「見てて楽しいん?」
『楽しいよ、青春て感じ』
「フーン」
白石が金ちゃんに眼が行っとる間にフェンスの方へ行って、視線の壁になってやりたくなった。名前が白石だけを見てるのを、邪魔したくなった。
「名前」
『、名前』
「あ、白石が呼んでたから移ってん…あかんかった?」
『ううん良いよ』
俺を見て笑ってくれる、それだけで何か、嬉しくなった。
ずっとその顔を俺にだけ向けてくれたら良え、のに。
「あんな、俺…」
『え?』
「お、俺も、名前と仲良くなりたいねん…」
『本当に?仲良くしてくれたら嬉しい』
「、ええん?」
『うん!明日から白石君と3人でお昼食べよ「あかん!」』
『忍足、君…?』
「そういうんちゃうねん…」
分かってしもたんや。モヤモヤの理由が嫉妬やって。好きやから白石と一緒に居る名前が気に入らへんのやって。
俺だけが良い、俺じゃあかんの…?どうしようもない独占欲が、溢れた。
『えっと、』
「お、お、俺は、」
俺は名前が好きやねん。
恋愛なんかしたくない、そう言われたとしても白石を裏切ったとしても独占欲は止まらへんくて口が勝手に動こうとした、その時、
(え!?ほんまに!?)
(せやで、名前って今まで顔隠してたから気付かへんかったけど人殺しやーって噂立ってた子やもん)
名前に気付かへんと後ろを通ったクラスメイトの声が聞こえて、時間が止まった気がした。
人殺し、って…何の話し、や。
「……………」
『あ、アタシ、帰るね』
「、名前!」
『部活頑張って!』
「ちょ、待っ―――……」
名前にもきっと聞こえてた。せやけど否定もせんと逃げる様に帰ってく背中は引き止める声も届かへん。
俺が、白石を裏切ろうとしたから?
俺が、名前に自己欲をぶつけようとしたから?
何があかんのかも分からへん。俺はただ、人殺しっちゅう言葉を何度も何度も繰り返した。
(20100428)
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