体育座りも止めてちゃんと立ってようかなって思えたのは単純で現金でどうしようもない証拠で。ちょっと馬鹿過ぎるけどアタシ自信は幸せだから何でも良よくて、廊下に立ってる間ずっと顔が熱くてニヤついてた。
『お、ちゃんと立ってたのか?』
「当たり前じゃん先生!アタシ良い子だもん」
『分かった分かった、で、仁王は?』
「あーアイツはサ…何か急激にお腹ピーコで痛いからってトイレ行きましたー」
『本当か?仁王の事庇ってないか?』
「アタシが仁王庇ってメリット無いし!」
『フーン。それなら良いけどな、お前は課題プリント5枚で勘弁してやる』
「は、まじで!!」
『放課後残ってやって、提出してから帰れよー』
あ、あり得ない…
罰があるなら廊下立つ必要なくない?普通どっちかじゃん!そりゃブン太の事待ってる時間はあるけどもしそれまでに課題終わらなかったらどうすんの…!ブン太に文句言われてブン太との約束が無くなるんじゃん。
こんな事なら仁王庇ってやるんじゃなかった。貸しにしておけば後でブン太の事とか協力して貰えるかなって目論みだったのにさ、仁王は病人だから課題免除でアタシだけ課題っていうパターンだとしたら最悪過ぎるし超ムカつくんですけど。
「ハァ…とにかく頑張るしかないよね…」
辛い事の後には良い事があるもん、ブン太とデートが待ってるもん、それだけを糧に課題プリントを進めてる時だった。
『おーやっとるやっとる』
「、仁王?」
『お腹ピーコの仁王ぜよ』
クックックッ、相変わらずムカつく顔で笑ってる仁王は黄色のジャージを羽織っていかにも部活までサボってますって感じだった。
っていうか!
「アンタ課題は!?」
『俺は無しじゃ』
「やっぱり…!何でアタシだけなの!こんなの依怙贔屓じゃんか!」
『依怙贔屓とか久しぶりに聞いたのぅ』
「うるさい」
『仁王クンは病人な上に部活があるからって大目に見てくれたんじゃ』
「……その部活だってサボりなくせに」
『休憩中ぜよ』
調子良い事ばっか言っちゃって。
こういう男が居るから理不尽な社会になるんだよね、アタシみたいな真面目な人間が馬鹿を見て仁王みたいな適当な奴が楽に上手く生きるっていうか。やっっっぱり庇ってやるんじゃなかった!
「でー?休憩中に何で教室帰って来たの?忘れ物?」
『誤魔化してくれたお礼しよか思っての』
「お礼?本当に?」
『まークン嘘吐かない』
「気持ち悪いからそれ!」
『ククッ、とりあえずコレ』
「、」
ピンと仁王の指で弾かれたモノはヒラヒラ揺れながらアタシの手に降ってきて。ツルツル光沢があるかと思えば、ブン太が顔を洗って顔を上げた直ぐの写真だった。
ちょっと待って、超格好良いんだけど。良く言う水も滴る良い男ってやつ!こんな瞬間レア中のレアじゃん、仁王ってば良い仕事する…!!
「仁王」
『ん』
「何かあったらまたフォローしてあげるからね!」
『お前さんのそういうとこが良いところなんじゃろうな』
「は、どういう意味」
『何でも無か』
「あっそ?」
『それより早く課題済ませて部室来るんぜよ』
「え、」
『そっちが本当のお礼じゃき』
含み笑いをして教室を出て行った仁王だけど、本当のお礼って?この写真だけでも十分なんだけど?
考えたってさっぱり分からないまま、アタシはブン太の写真を見つめながら課題を必死に済ませた。やれば出来るじゃんアタシ!
(20100215)
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