ベリーベリーハイテンションっ(はぁと) | ナノ


 


 04.



手握り過ぎって、やっぱりそういう意味でしょ?


『お前さん、鼻の下伸びとる』

「へっ!?」

『すけべじゃのぅ』

「ち、ちが…!別に変な想像なんかしてないし…」


あれから1限目、2限目、時間はいつもと変わらないスピードで過ぎてってもう最後の授業だってのに脳内は朝と変わらない。未だにブン太の声がこだましてアタシを良くも悪くも支配してくれる。
だからって仁王が言う様な変な妄想なんかしてないし。そりゃあ期待はしちゃってるけど…だけどあんな事言われたら期待しない方がおかしくない?ブン太のこと何とも思ってないならともかくアタシはブン太が好きな訳だし期待したくもなる、じゃんか。


「ね、仁王」

『ん』

「今日のさ、朝のこと、なんだけど…」

『朝?』

「指相撲したじゃん」

『プリッ』

「ブン太が言ったこと深読みしても、い、いい、のかな…」


黒板に向かって数字と記号を書き綴る先生の目を盗んでコソコソと聞いてみたけど口にしてみれば恥ずかしさのボルテージ急上昇。
何自惚れてんの、何乙女しちゃってんの、自分で突っ込みたくなるくらい羞恥は溢れるのに仁王ときたらまた面白可笑しそうに口が笑ってる。その顔、結構ムカつくんだけど…!


『性春じゃな』

「字違うから」

『精春?』

「それもちょっと…」

『我儘は嫌われる元ぜよ』

「何なのそれ…!」


相談する相手を間違えた。
幾ら席が隣で事情知ってるからって適当主義マイペース男に話したってどうしようもない。しかも嫌われる元って。何気に嫌味に聞こえるんだけど“ブン太に嫌われる”って。


「もういい忘れて」

『ククッ、俺は深読みして良いと思うんじゃがの』

「え、」

『冗談じゃ』

「は?」

『俺はブンちゃんじゃないしブンちゃんの気持ちはブンちゃんにしか分からんぜよ』


こんの馬鹿男…!!
何だかんだで良い事言ってくれるじゃん、て嬉しくて見直したのに冗談?冗談て何!本当はブン太の気持ちだって何だって分かってるくせに何でこんなに意地が悪いの仁王って男は…!女心を踏み躙って何が楽しいって言うの!


「ほんっと嫌な男!」

『クックックッ』

「信じらんない最低だね超ムカつく」

『最低なのはどっちだ?』

「は、そんなの仁王に決まってんじゃない――て、え?」

『最低なお前等2人、廊下に立ってなさい』

「ちょ、先生…!!」

『何だ?課題の方が良かったのか?』

「い、いえ…………」


最悪過ぎる。
高校生にもなって廊下に立たされるなんて古典的過ぎて笑えない。仁王のせいで仁王が全部悪いのに、ブン太だって『ばーか』って口パクで言って来てさ、挙句には仁王ってば1人で屋上にサボりに行っちゃうし。……もう消えたい。


「ハァ…嫌な予兆になんないと良いけど…」


さっき程じゃないにしても廊下に立ってるのすら恥ずかしくて、ちょっとだけ反抗的に体育座りしてみる。授業中ともあって当然誰も居ないなら恥ずかしがる必要もないか、なんてスカートの中すら気にせずにいるとコツン、と頭から良い音がした。地味に痛いんだけど何なの…!


「、ボールペン?」


地味な痛みだけに地味な嫌がらせって?
明らか教室から飛んで来ただろうボールペンをへし折ってやりたい、そう思ってソレを拾うと、


「あれ、何か紙が付いて――……」


昨日奢ってやったお礼してくれるんだろぃ?今日も部室に迎えに来いよ

そんな文字が書かれてあった。
嘘でしょ?絶対嘘じゃん。


「…“だから今は大人しく廊下立ってろ馬鹿”って、』


嘘なんて嘘。本気にしてる、超本気にしちゃってる。
汚い字で書かれたメモは大事にポケットに仕舞って、チャイムが鳴るまであと20分間、ちゃんと立ってようと腰を上げた。

ブン太のが馬鹿なんだから、こんなの嬉し過ぎるじゃん!



(20100203)


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