ベリーベリーハイテンションっ(はぁと) | ナノ


 


 03.



昨日、ブン太がろうそくを刺したロールケーキは、今まで食べて来た中で一番ふわふわしてて一番濃厚な甘さだった気がする。


『、今日は朝早いのぅ』

「あ、仁王おはよう。っていうか部活は?」

『朝練休みじゃ』

「珍しくない?」

『雪でも降らんとええんじゃが』

「あははっ!だよね」


厳しい以上に厳しい立海テニス部が朝練無いこともビックリだけど朝からちゃんと隣の席に居る仁王にもビックリで。二重の驚きに、冗談じゃなく本当に雪が降りそうなくらい寒くて、思わず吹き出した笑いにも空気は白く反応する。

白い吐息なんか見ちゃうと肩を竦めてしかめっ面しちゃうのに、今日は顔が緩みっぱなしだとか。昨日のケーキが今日にも響いてるのかなって、本当心の中は乙女過ぎる。


『なぁ、指相撲でもやらんか?』

「何急に」

『指先冷えとるし暖まるついでに遊んだらええって思ったんじゃが』

「別に良いけど相変わらず不思議ちゃんだよね仁王って」

『プリッ』


今時指相撲だとか良く分かんない。もしかして仁王ってアタシの事好きだとか?好きだから、手握りたいとか?
そんな事を浮かべてみたけど仁王に限ってあり得なくて想像した自分がめちゃくちゃ恥ずかしかった。どんだけ自信過剰なの!


『お前さん』

「え?」

『昨日は何個奢らされたんじゃ?』


右手を伸ばしてぎゅっと絡めたら、スタートの合図もなく適当に親指を動かした。親指に並んで適当な会話をしてるんだろう仁王だけど昨日の事を思い出させられるアタシはブン太本人が居なくたってドキドキしてきて。
誕生日、一緒に過ごせたんだって事実が嬉しくて、恥ずかしい。


「き、昨日はアタシお金出してないもん」

『え?』

「アタシ、誕生日だったからブン太が出してくれた…」

『ほーう?通りで上機嫌な上に赤い顔でブンちゃんスキスキオーラ出しとる筈じゃのぅ?』

「、っ!」

『俺の勝ちぜよ』

「、ああっ!!」


ブンちゃんスキスキオーラって何それ!
変な事言わないでよ、口にしたかったのに動揺は半端なくて、その隙にグッと押し込まれたのは親指。

だって昨日、帰り際トイレに行ってレジでお財布出そうとしたら『もう会計終わってるから出るぞ』とか。何処の漫画の世界だよって言いたくなるくらい格好良くて、ブン太の優しさが死ぬほど幸せだったんだもん。
それを思い出してたらそりゃ気も緩むって話しでしょ?だけど仁王、ちょっとムカつくんだけど。


『顔も心も身体もだらしないのう?』

「、卑怯じゃん!もう1回やったらアタシ普通に勝てるもん!」

『何回やっても同じやと思うんじゃがの』

「うるっさい!も1回ったらもう1回!!」


ほんのお遊びだったのに眼を細めて笑う仁王ときたら凄い憎たらしくて悔しくなった。
なんか、ブン太が好きなことも片想いしてることも馬鹿にされてる気がしてどうしても仁王を負かせたくって。そういう気持ちの方がガキ臭いのに、だけどアタシだって譲れない思いがあるんだから!


「仁王、顔にハエ止まってる」

『ハエにも好かれる良い男じゃ』

「ちょっとは気にしたら良いのに…!」

『名前の考える事なんか見え見えぜよ』

「む、ムカつくー!!」

『つーか、お前等何やってんの?』

『ブンちゃんやっと来たんか』


再度手を握り直して、どうにか気を散らそうとするけど生憎詐欺師は簡単に騙されてくれないし。苛々だけが募ってく中、ガムを膨らませたブン太が視界に映る。だけどごめんね、今それどころじゃない。


『やっとって、遅刻した訳でもねーじゃん』

『プリッ』

『で?何?指相撲?』

「これはね、アタシのプライド賭けた戦いだから!!」

『は?』

『ブンちゃん、愛ぜよ愛』

「仁王は余計な事言わないで!」

『まじ意味分かんねぇ』

「分かんなくて良し!って、あああ!!!」

『お前さんじゃと相手にならんぜよ』


悔しい…!超悔しい!
今度は話ながらでもちゃんと集中してたのに。だからこそ余計に悔しい。仁王に負けたままじゃブン太が好きだって気持ちも否定されたままみたいに思えて嫌なのに…
まさか指相撲でこんなに熱くなるとは思わなかったけどもう1回、三度目の正直で仁王に手を伸ばすと、


『いーよ。次は俺がやる』

「、ブン太?」

『ブンちゃんも指相撲したかったんか?』

『そんなの良いからとっとと始めんぞ』

「ちょ、ちょっと、アタシが勝たなきゃ意味無いのに何、」

『阿呆名前は黙ってろぃ』

「あ、阿呆って!!」


アタシの前に割って入って来たのはブン太だった。
っていうかブン太邪魔なんだけど!アタシが仁王に勝って、仁王に『頑張って下さい』くらい言わせてやりたいんだから!

退いて、喉まで出て来た言葉だったのに、


『うっさい。―――――』


ブン太が小さく小さく吐き出した言葉のせいでアタシは右手を引っ込めることしか出来なかった。


『はい、俺の勝ちー』

『ブンちゃん意外と強いんじゃなぁ?流石愛の為ぜよ』

『仁王!うっせー!!』

『ククッ、良かったのぅ名前?』

「、」

『何赤くなってんだよ馬鹿!』

「な、なんだって良いでしょ!」


きっと聞こえない様に独り言だったんだろうけど、アタシ都合良い時は耳良いんだからね。

(仁王お前アイツの手握り過ぎ)

お陰で手に力入らないしそんなの卑怯、仁王より卑怯。
っていうか仁王にも絶対聞こえてんじゃん、馬鹿はブン太なんだから!



(20091230)


prevnext



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -