06.
2人で歩く道、ものの10分程度の時間は朝焼けが異空間に見えるほど綺麗で2人だけの世界にでも居る錯覚をくれた。
この時間がこれからも続けば良い、そんなん口に出来る筈無いけどもし口にしたなら笑い飛ばしながらも頷いてくれるんやろか。
今日君と冬を迎える
season.6 赤裸々随喜
「……………」
『……………』
「……………」
『……けんや?』
「な、なんや」
財前が消えてから5分。店から学校へ向かう道は周りの喧騒が耳に付くくらい静かに歩いてた。つまり沈黙やったっちゅうことやけど。いい加減何か喋れや、そう言いたそうに少し顔を歪めた##NAME1##が視界に入ってくる。眼は合わされへんけど隅っこに居るその視線だけで口が引きつってしまうには十分やった。
『なんやってー…何で急に大人しくなっちゃったの?』
「べ、別にそんな事無いで」
『じゃあ何で喋ってくんないの?』
「しゃ、喋っとるやん」
『今やっっと返事してるだけじゃん!光が居なくなってから地面ばっか見てさ!』
「そ、そんな事無いって…」
『吃りまくり詰まりまくりで良く言う!アタシ相手じゃ話す事も無いって?』
「ちゃ、ちゃうわ!」
『じゃあ何!アタシと一緒でも楽しくないし光が居なきゃ嫌だって?』
「ちゃうちゃうちゃう!そんなんちゃう!」
財前には感謝しまくりやっちゅうねん…結局いつも2人やなくて3人の時間のが多いねんから、2人で過ごせられる時間が出来たのはめっちゃ嬉しいねん。
せ、せやけどやな。
『もう何ー…』
「き、きき、」
『木?』
「緊張すんねん…!」
『――――――』
改めて2人きりで、##NAME1##は俺の手握ってくれてて、俺と##NAME1##だけの世界が気恥ずかしくて、幸せと並行に緊張が俺の身体中を取り巻く。
例えば変な事言うたらあかんとか、例えば面白い話しせなあかんとかそんな不安も抱えてみたり。
せやけどそれ以上に思うのは、会話が無くとも##NAME1##と一緒に居れたならそれだけで満たされる時間やっちゅうこと。ゆっくり並んで歩けるのが、俺には恍惚にも感じれたんや。
「…楽しいけど、緊張すんねんからしゃーないやん…!」
『………………』
「や、やっぱりあかん…?」
『……アハハッ!アハハハハッ!何今更、緊張って!ハハハッ』
「わ、笑うなや!」
『だって謙也ー、』
「、その先は言わんでええ」
どうせ可愛いとかウブやとか言うんやろ。分かってんねん散々アイツとかアイツとかアイツ等にヘタレ言われ続けて来たんやから。
俺やって好きでこういう性格なんちゃうけど、思ってしまう事は思ってしまうんやからしゃーないやろ!ヘタレ卒業したいし言われっ放しも癪やねんけど俺の思考回路は逐一そう出来てんねん!
『もう!怒んないで良いじゃん』
「おお怒ってへんし…」
『アハハッ、アタシ謙也のそういうとこが好きなんだよ』
「え、――――」
『謙也のせいで熱いし、熱冷ましに此処で光待ってるから先に部室行ってて!』
分かってたのに意地悪言ってごめんね
耳に伝う声と同時に右頬には柔らかい感触、暖かい体温が伝った。
ドンと押された背中のお陰で、いつの間にか到着した学校の門をよろけながら潜って。右頬を押さえて振り返ると前に財前に感じてた、特別の雰囲気を纏った##NAME1##が笑いながら投げキッスなんかしてるから。
「お、俺も好きやねんで…!」
堪らへんなって俺も素直な気持ちを叫んだった。裏声んなったけど。(でまた爆笑されたとか無いわ)
(20100309)
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