今日君と冬を迎える | ナノ


 


 05.



誰が引くかって思ってた。誰が譲るかって思ってた。
せやのに何で、2人と逆を行ってるんやろう。


今日君と冬を迎える
season.5 光陰


忘れ物、強いて言うなら目薬忘れた。困ると言えば困るけど、無くても何とかなると言えば何とかなる。学校ではパソコンも授業が無い限り弄らへんし。わざわざUターンして家に取りに戻る程やない。来た道引き返すとかそんな面倒臭いこと…俺はしたくないし。

せやのに何でアイツ等2人の背中に背を向けて歩いてるんやろ。##NAME1##と謙也先輩をわざわざ2人にさせるとかどうかしとる。


「……………」


気紛れ、で済めば良えけどこの気紛れがもし何度も続いたなら後が怖いと思う。遅い後悔繰り返してめちゃくちゃムカつく羽目になんねん絶対。

それだけは避けたいし自業自得っちゅう言葉なんや経験値に入れたくないのに。


「阿呆過ぎ、」


自分に呆れてしまいそうんなる。
今日の俺は朝から胃に響くもん食べて頭可笑しいねん、脳が正常に機能してへんねん、言い訳を並べながら家とは違う公園で足を止めた。

鉄棒にもたれてウォークマンを突っ込んで、昨日から鞄に入れっ放しのミネラルウォーター見て、まだ大丈夫やろって口に流し込んだら漸く眼が覚めた様な感覚。冷蔵庫に入れんでも十分に冷たい水が左右のこめかみに響く。ほんまに、水だけのせいやったらええのになって、そう思う辺り早速後悔その1や。柄に無いことなんかするもんちゃうし、ムカつく気持ちをぶつけるみたいに土を蹴ったら学校へ向かった。


「……何やってんねん」


だらだら歩いて、学校まで行くんも怠いわって頭を掻きながらいざ門を潜ろうと思うと頭悪そうな女が1人、黄色いジャージを尻に敷いて体育座りしてた。
まさかやけど。そのジャージ俺のちゃうんか。


『光ーっ!遅くない!』

「遅ないと思うけど」

『アタシ18分43秒も待ってたんですけど!』

「頼んでへんし」

『またそんな事言う!』

「はいはい悪い悪い」


適当にあしらってるフリしてみるけど実際はこめかみの痛みさえ消えてしもた。何やねんそのタイミング。


『本当に悪いと思ってる?本気で謝ってる?』

「ほんきほんき」

『嘘っぽーい』

「しつこい」

『じゃあ本気ならお詫びに部室までおぶってーっ!光待ってる間に足痺れちゃって動けないし!』

「、」


立ち上がった途端、俺の背中に飛び乗って来て何処が痺れとるって?ふざけた冗談も大概にしとけや阿呆。
思い切り眉を寄せて背中目指して眼を細めるけど、振り落とす気にならへん俺も結構ふざけてる。


「っちゅうか##NAME1##」

『なぁに、ひかるんっ』

「あの小汚いジャージ」

『あああっ!忘れてた!制服汚れるの嫌だったから光のロッカーから取って来たんだった―――、のわっ!!何すんの急に!』

「うっさい阿呆。馬鹿ボケ」

『悪口言い過ぎだし…!』


前言撤回。
やっぱり馬鹿は振り落として。地面から良え音が鳴ったら俺は口を緩ませた。

18分43秒とか細か過ぎやっちゅう話し。



(20100224)


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