honest love | ナノ


 


 04.



三角の3人、
きっと角は全部交わってるけどそれも今日まで、


honest love
series.4 甘い、甘い、甘い


『光、ケーキまだ残ってるよ、食べる?』

「食べる」

『ちょっと待ってね』


空気が柔らかくなって、機嫌上々に冷蔵庫を開けるあの人は可愛いより綺麗やった。さっきまでぐしゃぐしゃな顔で笑ってて綺麗っちゅう言葉なんや程遠かったのに何でやろ。
料理とは言われへん、ケーキに包丁を入れるだけの作業でも台所に立つあの人を“女”やと錯覚させてるんか。外へ出る訳ちゃうからって、薄いメイクでラフな服装やのに綺麗、クリスマスは俺にも魔法をかけてくれたらしい。


『はいどうぞ!』

「ん」


ケーキ食うて飯食うて、腹は十分に膨れてたはずや。せやけどテーブルに置かれたケーキを見たら胃袋は空っぽになったみたいな感覚で、右手が勝手に動く。
フォークでケーキを掬って口ん中へ放り込んだら身体が欲してた甘さが満たしてくれる様な、そんな気にもなった。


『光のその顔好き』

「は?」

『いつもと変わんない顔なんだけど眼が優しいの』

「……………」

『ケーキ作って良かったって思うよ』


ほんま何言うてんねんこの人。
部長にどれだけ甘ったるい顔してるんかは知らんけど、今どんな顔してるか分かっとるん?俺に好きや言う前に鏡で自分確認したらどうや?
悪いけど、俺ん事が好きでしゃーない、それにしか見えへん。


『あ、光、クリーム付いてるよ』

「、」

『ここ!光って意外と可愛―――』

「………………」


俺の頬っぺた向けて伸びて来た手を掴んで、誘うみたく視線を投げ付けて。


『ひか、る、』

「……名前」

『、』

「誰が可愛いって?」

『っ!』

「そないベタベタにクリーム付けとる女に言われたないし」

『ちょ、何すんの!!信じらんない!』


緊張の糸をピンと張った後、フォークに付いてた生クリームをあの人の頬っぺたに擦り付けてやった。
このまま行き着くとこまで行けたら良い、そうは思っても何や自分がダサい気がして。“卒業”を決めたくせに女々しいわ。せやけどそれもこれも、あの人が俺に気許し過ぎるせい。俺に懐き過ぎるせいやねん。せやから少しくらい悪態で意地を悪くしたってええんちゃう?


「何やキレイキレイ、して欲しん?」

『光がやったんだから当然じゃん?』

「はいはい、俺が綺麗に舐めとったるって」

『ち、違うし!ウェットティッシュで拭き取るだけで良いんだってば!』

「あーウェットティッシュが何処にあるか見えへんわ」

『目の前にあるじゃん!テーブルの上に!』

「あれや、裸の王様みたいに阿呆にしか見えへんウェットティッシュなんちゃう?」

『揚げ足取らないでよ!!』


わざとらしく舌を出して見せ付けて、期待通り大袈裟に顔を真っ赤にするもんやからやっぱりこの人面白い。十分に笑ってやって、あと一歩で拗ねると見えたら仕方なしにウェットティッシュを1枚抜いてやる。


「ほんま手掛かる女や」

『、光のせいじゃん…』

「責任転嫁とか最悪や」

『どう考えても光じゃん!』

「はいはい俺のせいでええ『なんやねん…!』」

「、は?」

『あ、蔵おかえりなさい』

『なんやねんこの甘ったるい空気は…!』


ウェットティッシュであの人の頬っぺたをゴシゴシ拭いてるとお約束に部長が帰って来た。
言うてもイチャイチャしとる訳でもキスしとる訳でも無いのにその反応は大袈裟やろ?自分から出て行ったくせにそやって怒るん止めてくれません?やっぱ部長って大人っちゅう大人でも無いわ。


「部長、コンビニで何買うて来たん?お土産は?」

『話し反らしたらあかんやろ財前』

「せやけど名前やって知りたいんちゃう?」

『うん!知りたい!』

『、名前ちゃんが、そう言うなら…』


この部長の甘さも大概やけど、コンビニの袋から出て来たノエルとカフェオレを見て俺とあの人は眼を合わせて無いわーと思った。
俺は冷蔵庫のケーキで十分なんでノエルは部長が全部食べて下さいね。


『光、蔵が嫌味っぽい…』

『ちゃ、ちゃうねん!売れ残りが安くなってたから、つい…!』

「阿呆すわー」


ま。クリスマス、今日までは特別っちゅうことで。(あ、4人で遊ぶ話ししてへんかった)



(20091225)

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