目と目合わせて
零れた笑い声
honest love
series.3 スペシャル
あれから飯を食うて適当に腹を太らせて、せやけど既に甘ったるいケーキのせいで普通に量を摂取出来ひんかった。
『光君て少食?』なんて聞かれたら苦笑が浮かんでもう少しだけケーキ食べてくれば良かった、とか。
「ただいま。……何ですかその阿呆面×2」
3時間程で戻って来た俺を見て、コーヒーを飲んでたやろう部長と名前は時が止まったみたいにカップを持ったままこっちを映した。
『ひ、ひかる…?』
「部長にでも見えます?」
『そうじゃなくて!だって彼女…』
「…………」
今度は真ん丸くした眼を伏せて俯いて。何やそない“ショック”やった?
『財前、彼女って何や?ちゃんと付き合うてるっちゅうこと?』
「一応?」
『いつからや』
あの人の代わりに突っ込んで来る部長のコーヒーを奪って一口飲むと、いつからか俺専用に固定されたマグカップを取り出してコーヒーを注いでくれた。部長からそれを受け取って、あの人の正面に座る。
「付き合い始めたのは1週間前。会うのも今日が2回目、因みに今日は飯食って散歩して終わり。それで満足です?」
『……1週間前、』
「なん、妬いてるん?」
『ち、ちが…』
『こら。名前ちゃん虐めんの』
俺の頭を小突いた後くしゃっと撫でた部長はジャケットを羽織って『コンビニ行って来るわ』とか。
ほんまは違う男と2人きりになんやさせたくないくせに、こういうとこ昔から変わらへんし大人やと思う。
それに引き換え俺も、逐一動揺するあの人も、子供なんやろなぁって。ちょっとだけ、ムカつくけど…まぁそういう部長やからこそ今も話ししたいって思えたりするけどやっぱり認めたくはない。
『あの、光…』
「何?」
『アタシ、我儘かもしれないけど…』
「は?」
『蔵には言えないけど、光が彼女出来たってちゃんと言ってくれなかったこと、寂しかった…』
マグカップをテーブルに置いて、ソレを握り締めたあの人は孤独を背負った様な顔してて。
『アタシ、調子に乗ってた。アタシと光は特別な関係だって思ってたから…』
「―――――」
言葉通り、俺とあの人は特別っちゅうか部長含めて特殊なんやと思う。それは分かってたことやけど改めて口にされると、ムズ痒いような擽ったいような。
「あほ」
『え、』
「間違い、ではないやろ」
『……………』
あの人の頭に手を伸ばして、部長が俺にやらかしたよりもっとグシャグシャにしてやるとやっと顔を上げてクシャクシャに笑うから俺も伝染した。
ほんま、面倒くさ。
逆の手はまたピアスの箱をぎゅっと握った。
(20091216)
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