携帯から見えた
僕を見る君の優しさ
honest love
series.2 憂鬱ピアス
0720号の部屋を出て数分、白い息を吐きながらポケットにあるカイロを握り締めて歩いてると携帯が着信を知らせる為に振動した。
外に手を出したくないのに、そうは思っても考えるより先に出た手は携帯を開けてメール画面を表示させた。
「……ブッ、」
思わず噴き出してしもたんはメールのせいで。
“財前、名前ちゃんが心配してるから後でちゃんと説明するんやで”
多分部長は嫌々、不本意やけどコレを打ったんやろなって想像出来たから。今まで散々名前にちょっかい出してきた訳やし、少なからず部長も驚いたんやと思う。俺やって別に、自ら彼女を作ろうなんて気は更々無かったし。今日、クリスマスにあの人に逢えて良かったと安堵する自分は実際居る。
せやけど、
『あ、光君!』
「……………」
『良かったー、ちゃんと来てくれたんや』
「まぁ約束してたし」
『有難う!』
この女は“それでも良い”って言うて来たんや。
俺は誰かと恋愛する気ない、あの人だけや。そう言うても忘れる為に利用してくれ、とか。ぶっちゃけ面倒臭いけど俺もそろそろ潮時やとは思てたし、何よりこの女は……
名前に似てる、から。
『ね、光君、何処行く?』
「何処でもええけど」
『せやったらご飯食べに行こ!』
グイグイ腕を引っ張られて、それでも嫌な気がせんのはやっぱり似てるせいやと思う。喋り方も性格も全然違う、せやけど顔が…何となく似てる。
『ご飯美味しいなぁ光君』
「せやな」
『あんな、うちプレゼント用意してん』
「、俺無いで」
『ええねん!うちがあげたかっただけやし!』
「……………」
『これな、光君と対になる様に買ったピアスやねんで。うちはもう付けてんねんけど』
飯を食うてケーキを注文した後、渡されたピアスに嬉しいより動揺した。彼女とは言うたって単語がそうであるだけで気持ちは殆ど無い。それやのにプレゼントを貰って俺と対になっとるとか。しかも三日月みたいに変な形かと思えば2つのピアスが重なるとハートになるっちゅうベタなモノらしい。
「……………」
『ご、ごめん、気に入らへんかった…?』
「そういうんちゃう…」
『ほんまに?』
「俺が用意してへんかったから」
『せやから!そんなん気にしやんで!』
正直言うと、あの人にクリスマスプレゼントを買うてた。それが、ピアスやった。
流石にリングをあげる勇気は無くて、左の薬指に勝てるとは思わへんかったら、せやからピアスやった。渡し損ねたソレだけがぐるぐる頭に過って0720号の部屋へ戻りたくなって。憂鬱が取り巻く。
『あ、あんな、もし光君が良かったらの話しやねんけど…』
「は?」
『プレゼントの代わりに、光君が好きやって言うその人と旦那さんと、4人で遊びに行く事出来ひん…?』
「――――――」
『あ、あかんならええねん!ただその人見てみたいし、光君が吹っ切るキッカケにならへんかな思っただけやし…』
この女が言いたい事は安易に分かった。
名前を見て、名前に自分の存在を見せ付けたいっちゅうことくらい。
「…別にええで」
『、ほんまに?』
「日にち合わせとくわ」
せやけど敢えてその誘いに乗ったのは自分の憂鬱をも消してしまいたいからかもしれへん。
ほんまはずっとあの人を忘れたかった?
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光からメールを希望と言って下さった方がいらっしゃったので(本当に有難うございます!)このお話でメール機能を追加したいと思います。
★光からメール(空メして下さい)
(20091209)
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