白い光りに手を伸ばして、
滲む視界が虹彩を刺激した
honest love
series.9 また僕は、
隣から聞こえる声は街から聞こえる喧騒と変わりなくて、今日で長くも短かいあの人との生活が終わるんかと思うと部長と並ぶ背中を眺めることしか出来ひんかった。
寧ろ、無意識でそうなってた。
『次何に乗る?光君!』
それ以上、特に何も考えらへんし考える気もなくてただ歩いてると遊園地に着くのもあっという間で。ガキやあるまいしジェットコースターを前に浮かれたりもせえへん。
腕を引かれてあれこれ乗せられて、流されるままで時間を過ごした。
1分1秒、ただ過ぎて行く時間がくだらへん。くだらへん、けど、無情やと思った。虚しいって。
『、光君?』
「……………」
『光君、大丈夫?』
「、」
『もしかして体調悪いん?』
「別に普通やし」
『せやけど、』
「次行くで」
あの女の言葉を振り切って足を出すと名前が憂愁な顔して振り返った。
何でそんな顔すんねん。もうええからこっち向くな。
俺を、映さんで。
『ほんまにしんどかったら言うて?』
「大丈夫や言うてるやろ」
『そっか、分かった』
定番っちゅうか未だにあるんや、そう思てしまうホラーハウスに俄然気落ちしてしまいそうやけど何でもええからもう、今日が終われば良え。
『光君、こういうの平気なん?』
「作り物やし人形ん中に人が入っとるだけやん」
『あははっ分かる!うちも結構平気やから』
2人ずつ誘導される暗闇に自分まで回って来て、さっさと出ようと中に入ると早速『うらめしやー』とか目の前にのっぺらぼうがライトに照らされて現れた。あかん、普通にうざい。
『光君、暗すぎて何も見えへんのやけどちゃんと居てる?』
「居る居る、早よ出るで」
『分かった、付いて来てよ?』
見えへん言うてんのに付いて来るも何も。近付いて来る幽霊やらお化けやらに「お疲れす」なんて押し退けながらひたすら前へと進んでると、
『いやぁああ!!』
「、」
『ぎゃあ!』
聞き慣れた声と同時に背中は衝撃が走って勢いのまま転げた。ホラーハウス苦手やったんなら無理に入る必要ないのに、床に叩き付けられた痛みに耐えながら身体を起こすと今度は『ごめんなさいごめんなさい呪わないで』繰り返し謝られて。俺が化け物やって勘違いしてるんやろ、あの人ほんま阿呆や。
部長は何処に置いて来たんや、溜息を堪えて声を出そうと思ったのに。
『……ひかる?』
「……………」
『ひかる、光…!!』
真っ暗の中、顔も見えへんし声もないのに俺が、分かるって…?
『怖過ぎるよ、早く出口連れてってよ光…!』
「…あほ」
『あほでも何でも良いから!』
「ほんま阿呆やで」
立ち上がることも出来ひんまま縋って泣き喚くあの人の背中に手を回した。懐かしく感じる体温が無情に思った情感を消してくれる気がして、俺が、1番阿呆なんやって。
「名前」
『え?』
「俺やっぱ無理」
『、何が…?』
「ばっくれんで」
『は、ちょ、光!?』
あの人を担いだら来た道を戻って、部長にもあの女からも逃げる様に建物の裏へ回る。
ホラーハウスから出た瞬間、愕然とした係員が何や言うてたけどそんなんどうでも良くて、ただ太陽が眩しかった。くすんで見えてた空が、爽快を描くみたいに青くも白く煌煌と光る。
『、ひかる?』
「容疑者とか呼ばれるんもダルいけどまぁええか」
『よ、容疑者?』
「“遊園地に来ていた女性を誘拐”」
『ゆうか……え、それって、』
「愛やろ?」
『――――――』
名前のせいやねん。せっかく離れたろって思ったのに俺を見付けるから。
大袈裟でも何でも、俺は何処に居っても名前に足が向くんやって分かった。名前やってそうなんちゃう?
ポケットに入れっ放しやったピアスの箱を投げて、クリスマス色の包装に瞠若するところ間を置かずに口を開く。
「マグカップ買いに行くで」
憂愁ばっかり見せてたあの人は、俺の好きな顔で笑った。
(阿呆でええ、あの人を忘れられる訳が無かった)
メールを打ってあの女からの返信を見ると馬鹿男、3文字だけ返って来てその通りやなぁって吹き出した、二度目の恋。
きっと、誰より愛してる。
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完結です。
遊園地シーンとか真面目にどう書いて良いのか分からなくてかなりの割愛そして乱文でごめんなさい。
あの女とかあの人とか、ぐだぐだで理解し難い言葉も全部申し訳無さに失笑です。
蔵はどうなったのーとかは置いておいて(困るけど微笑ましく思ってる感じですきっと)とにかく何をしても光はあの人を忘れられないんだ、っていう愛を分かって頂けたらそれだけで良いです(´;ω;`)
次回また出産編とか書くかも書かないかも微妙ですが、長いお話しにお付き合い頂きありがとうございました!
オマケ→
(20100417)
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