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 story.3



移動教室、英語の授業だってのにパソコンの前で英文をキーボード入力させれてる。パソコンに慣れる為だっつっても日本語じゃない辺りスペルミスだって気付きにくいしまじで面倒臭い。

この時間に仕上げる様にと出題された課題プリントだけ置いて教室を出て行く担当教師を横目に、ドアが静かに閉じられるとクラス中の緊張が解けて溜息とか聞こえてくる。もちろん俺もその中の1人で、椅子の背もたれに体重を掛けたらグッと身体を伸ばした。


『がっ君がっ君』

「あ?」


見計らった様子のアイツも、キーボードから手を外して俺の肩をつんつん突つく。


『がっ君番号教えてー!』

「なんで」

『え、駄目なの?』

「別に良いけどイタ電した瞬間、着拒してやるかんな」

『する訳ないじゃん!アタシ達親友なのに』

「だからなった覚えないっつの!」


学校の事で分からない事があれば侑士に聞けば良い、俺に連絡する事なんか無いだろうに。でも、まだアイツは転校初日で友達も居ないし、クラスで何かあった時に困るだろうから。仕方なく赤外線で番号を交換してやった。やっぱ俺優しい。


『ありがとがっ君!』

「別に良いけどお前何やってんの?」

『えー?』


赤外線通信をすれば自動で電話帳に登録されんのにカチカチカチカチ。気になって横から覗いたら、まさかの出来事に顔が思いっきし歪んだ。


『よし、オッケー』

「…おい」

『うん?』

「オッケーじゃねぇよ何やってんだよこの馬鹿っ!!」

『だ、だから頬っぺたつねるの止めてってば!』

「じゃあどういう事か説明しろよ俺の名前をわざわざ“クソクソがっ君”に変えた理由をよ!!」


“がっ君”とか“岳人”ならまだ分かる。だけど何だよ、何で“クソクソ”が入るんだよこのボケは。
普通、電話帳くらいフルネームとか普通ーーに登録するもんだろ!ふざけんな!


『可愛い、じゃん?』

「可愛くねーよ」

『だってアタシ、クソクソって気に入ってるんだもん』

「馬鹿にしてるの間違いだろ」

『そんな事ない―――って、何それ!!』


逐一むしゃくしゃさせるアイツの行動に俺も平常心なんか捨てちまって。気付いたら自分も電話帳を修正してた。
“名前”改め“うざ名前”。


『やっだ可愛くないしセンス無い…』

「別にセンス求めてねぇしありのままじゃん」

『やっぱがっ君意地悪ーい…』

「誰がそうさせてんだよ」

『いだっ!』


軽く頭を叩いたつもりだったのに意外にもパシッと良い音がするから笑いそうになって。アイツの頭、脳ミソ入ってないくらい軽いんじゃねぇの?


『今、心の中でアタシの悪口言った』

「、言ってねー」

『嘘だ絶対言った!顔がそう言ってた!』

「うっさいうっさい!しょうがねぇじゃん、脳ミソ無さそうとか本当の事だし」

『ひ、ひっどい!脳ミソ無いは言い過ぎでしょ、がっ君のくせに!』

「な、お前こそ“くせに”って何だよくせにって!」

『知らない』

「あーまじムカつく!まじウザイ!」

『あっかんべー』

「!!」


究極に憎ったらしい顔で舌を出すもんだから完璧にぷっつん切れた俺は戻んなくなるくらい左右に頬っぺたを引っ張ってやった。

結局そんな事してたら課題は終わらなくて、揃って放課後居残りが決定した、そんな1限だった。

(名前と居るとろくな事がない)(だけど時間が経つの早いとか、)(………最悪)



(20090919)


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