gale | ナノ


 


 story.2



「……………」


9月1日、始業式を終えるとHR開始のチャイムと同時に担任と一緒に何かが教室に入ってきた。

あ、アイツ…!
「ゲッ!」心の底から声を出そうと思ったのに、


『あーっ!!がっ君!!』

「、」


言う間もなく指差された俺はクラス中の視線を受けた。
アイツは侑士の彼女だとか言ってた名前じゃん。何で寄りによって俺が同じクラスになってんだよ…


『先生、アタシがっ君の隣が良いです!』

「な、何でだよ!」

『お前達知り合いなのか?』

『アタシとがっ君は親友を越えた仲良しなんです…転校してきたばっかりで何も分からないアタシとしてはがっ君だけが頼りで…』

『そうか、じゃあ隣に座りなさい』

「なっ…、」


誰が親友を越えた仲良しだって!?
適当な事ばっか言うアイツに怪訝を向けるけど、当人は機嫌良さそうに隣に座る。先生も先生で信じてんじゃねぇよ。


「ホラ吹き女、何考えてんの?」

『何って別に…ホントのことだし?』

「俺は親友になった覚えも友達になった覚えもない」

『もしかして昨日笑った事根に持ってる?案外陰険なんだねがっ君』

「うっせーよボケ」

『いい痛い!痛いってば!何でつねるの?超暴力的…!』


陰険ていう単語が妙にムカついて(多分アイツが言うから余計腹立つ)、思っっきし頬っぺたつねってやると擦りながら顔を歪めた。
へへっ、ざまーみろ。


「昨日はな、初対面だったし侑士の彼女だって言うから多目にみてやったけど、今日からは初対面でもなけりゃクラスメイトだかんな。我慢なんかしてやんねー」

『ね、猫被ってたんだ…』

「猫被ってんのはお前だよ馬鹿名前っ!!」

『痛ッ!頭も叩かないでよ髪乱れちゃうじゃん!』

「誰も見てねーよお前の頭なんか」

『ひっどい…』

「調子乗ってんのが悪い」

『がっ君冷たーい…』

「冷たくて良いよ」


やっと大人しくなったかと思えば机の影で携帯ポチポチ弄り始めて。侑士に告げ口でもしてんのか?まぁ何でも言えば良い。俺悪くねぇもん。
そうだよ、名前には俺じゃなくて侑士が居るじゃん。クラスが違ったとしてもこの学校には侑士が居るし。侑士に甘えたら良いって話し。そもそもアイツが俺に失礼なだけで、始めからしおらしくしとけば俺だって嫌な態度取ったりしない。元凶は全部名前なんだよ馬ー鹿。


『ではHRは以上ですが、今日から早速授業もありますし明後日からのテストに向けてしっかり勉強するように』


休み明けお決まりの担任の話しが終わるとタイミング良くチャイムは鳴って。
新学期早々授業かよ、始業式の日くらいさっさと帰らせろよ、文句を浮かべながら移動教室の準備をしてると、


『、』


皆何処に行くんだろって顔で挙動不審なアイツ。
……あーもう。面倒臭ーな。


「名前」

『、がっ君』

「さっさと準備しろよ。置いてくぞ」

『―――――』

「何」

『…ううん、何でもない!』

「……………」


昨日見たゲラゲラ笑う顔じゃなくて嬉しそうに笑った顔は別人みたいだった。そんな風に笑えるならずっとそういう顔しとけよ。

(後で侑士に文句言われるのが嫌なだけだし)(俺が優し過ぎるだけ)(別にアイツの為じゃねーもん)



(20090907)


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