トントン、肩を叩かれて振り返ればニーッコリ機嫌の良さそうな侑士。胡散臭さが普段より3割増ししたその顔に自然と眉が寄る。
『なんやがっ君その顔』
「べっつにー。侑士が変顔してるせいだろ」
『変顔てなぁ…俺の男前スマイルに嫉妬はあかんで?』
「誰が嫉妬するか!」
『まぁまぁ嫉妬はともかく、今日は男前侑士君からお知らせあんねん』
「は、お知らせ?」
くいっと眼鏡を上げて位置を直しながら誇らしそうな表情はやっぱり胡散臭い。伊達なら邪魔臭ぇのに眼鏡なんか掛けんなよって突っ込みたくなると侑士は爆弾発言を告げた。
『俺彼女出来たんや』
………、彼女?
好きな女居てへんし今は面倒だからって言ってた侑士が彼女?まじで言ってんの?
侑士に彼女が出来るのは別に良いんだけどさ、「良かったな」の言葉の前にビックリのがでかくて瞠若せずには居られなかった。
『紹介するわ、名前ちゃんこっち来て』
「紹介って、今居んの?」
『ははは、あっこの木の影に隠れとるわ…』
名前って名前を呼びながら侑士が手招きする方を見ると気恥ずかしそうにソロソロと近寄って来る女。
顔は特別美人じゃないけど普通に可愛くて有りかなって感じで、性格は見たまんま照れ屋なのかって印象だった。侑士には気が強そうな美人が似合うって勝手に思い込んでたもんだから意外っていうか、侑士のタイプってこんな奴なんだって改めて思ってみたり。
『名前ちゃん何で隠れてたんや?』
『な、何となく?』
「つかどういう知り合い?侑士と同じクラス?」
『さぁなぁ…同じクラスになれたらええけど』
「はぁ?」
生徒数が多いこともあって同学年の奴を全員知ってる訳じゃないけどこの女の顔は見たことない。だったら侑士と同じクラスかって安易に想像したのに『同じクラスになれたら良い』って、意味分かんねぇんだけど?
侑士も頭良いんだったら分かる様に話せっつの。
『8月31日、今日で夏休み終わりやろ?』
「いや話し飛び過ぎだろ」
『せやからな、名前ちゃんは明日から氷帝に転校してくんねん』
「は、まじで?それなら何で知り合いなんだよ」
『んー、それは2人だけの秘密やで』
「何だそれ…」
夏休み最後だってのに部活もあって、やっと部活が終わったーって疲れを癒したかったのに妙に気になる言い方しやがって。これじゃスッキリしねーじゃんか。余計憂鬱になるっての。
そんな鬱憤を、頭を掻くことで表に表すと、
「クソクソ、意味分かんねぇ…!」
『ぷっ!』
「、」
侑士とは別の声で噴き出してゲラゲラ笑う声。
当然この場には俺含めて3人しか居ないし?侑士じゃないとなれば1人しか居ないけど……
『ハハハハッ!侑士の言った通りじゃん!』
「え、」
『ウケるウケる、がっ君面白いー!』
第一印象とはかけ離れた笑い声に再度ビックリで思わず一歩引いた。
「お、面白いって、何だよ…」
『“クソクソ”ってやつ』
「、は?」
『今時クソクソって口癖の人居ないもん、侑士に聞いて生クソクソ聞きたかったんだー』
「な、生クソクソ…」
コイツ何言ってんの?侑士も笑うとこじゃねぇし。訳分かんない頭が更に困惑してきたけど、いつまで経っても笑うのを止めない2人に馬鹿にされてる気分で段々腹立ってきて。
「うっせ!笑うんじゃねぇ!」
『ごめんごめんごめんなさーい』
「謝るならもっと真面目に謝れよ!」
『ごめんね、てへっ』
「てへ、とか全っっ然可愛くねぇよ馬鹿!!」
『がっ君、俺の彼女やし多目に見たってやー』
「侑士もうぜー!」
今年の夏休みは嫌な最後を迎えて終わった。
明日から学校とか、メチャクチャ嫌んなった31日。
(クソクソ!これも侑士のせいじゃん!)(………)(クソクソ、の何が悪いんだよ!)
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侑士のめばちこを聞いてたら何でかがっ君が書きたくなって始めました(笑)
だけど前回のがっ君のお話と似たような内容になりそうです。
(20090828)
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