honey | ナノ


 


 08.



痛いの痛いの飛んでいけ
そんな台詞が聞こえた


honey
pulsate.8 治っちゃいました。


『はいお薬ー』

「、」


あれからあのストーカーによって幾つか分かった事があった。
まずあの人のクビは、ストーカー男が不倫不倫と噂を流したことが原因に含まれてた。

そしてあの人が見せたプリクラから俺ん事を知ったストーカー男は、あの人を尾けてたら俺に当たると踏んでの行動やったとか。まぁ間違うては無いけど……
コンビニで見せた笑いは皮肉やなくて照れてたとか、それを聞いた時は激しい吐き気が襲った。薔薇は薔薇でドライフラワーにしてくれ、そう言われた瞬間ゴミ捨て場に放置したけど。

兎に角、頭が痛いことこの上無い。


『そんなに頭痛酷い?』

「眩暈するわ…」

『そうだよね…あんな奴にストーカーされたんだから頭も痛くなるよね…光、可哀想』

「……………」


頭痛薬と水を渡して来たあの人はストーカーの正体が分かった途端、恐怖心は無くなったみたいで怒りだけを当人に向けてた。
『ひかる…』なんて弱々しく発してた声と同一人物やとは思えへん威勢さえも頭痛の元とか、ほんま阿呆な話しや。


『もしまた篠原さんに会ったらアタシが光守ってあげるからね!今度こそぎったぎたにしてやるんだから!』

「……期待せんわ」

『何で!?光がピンチな時はアタシの出番じゃん!大丈夫、メリケンサック買うし!』

「……警察行きたいん?」

『正当防衛です』


どっちか言うたら一方的に殴り掛かるくらいしそうやけど。残りの頭痛薬をぐしゃりと握り潰して誇らしげな顔を見たらもう突っ込む気にもなれへん。

とりあえずあの男の話しは止めろ、言おうと思うとベッドに肘を付いたゆきはヘラッと笑って俺を映す。なんやねんその顔。


『でも光、格好良かった』

「は?」

『アタシ達は真剣に付き合ってるんだって言ってくれたの嬉しかったよ』

「……………」


横になった俺をニヤニヤしながら見て来るのが不快指数を高める。
柄じゃない言葉なんや言うもんちゃうわ、それを顕にする様に起き上がって煙草に手を伸ばすと今度は『どうぞ』とかライターの火を向けてくる。

あー…めっちゃウザイ。


『ね、光、数年後っていつ?』

「……………」

『アタシと本当に結婚してくれるの?』

「……………」

『光が、アタシと結婚したいってこと?』

「……………」

『結婚したいくらい好き?愛してる?』

「……………」


図に乗ったゆきはとことんシカトするに限る。高校の時より口数が幾分少なくなった俺はそう学習した。シカトしてシカトして、最後には拗ねるあの人を見て仕方なくを装いながら手を伸ばす。それが俺の特権や。


『光がそこまで言うなら結婚してあげても良いよ?』


シカト、


『アタシも光が好きだし?光以外考えらんないし?』


……シカト、


『早く光と結婚して、財前さんて呼ばれたいなぁ…』

「………さいわ」

『え?』

「うっさいわ。ええ加減黙ったらどうなん?」

『、』


シカトするつもりやったのに、拗ねた顔を笑ったるつもりやったのに。

ベッドへと引き込む腕は不本意で言う事きかへんねん。


『ひかる、』

「とりあえず、俺の為に就職先見付けたら?」


結婚には金が必要やねん。
口にしなくとも理解したらしいゆきは俺の上に被さって笑いながら胸に顔を沈めた。

結局、高校から成長してへんのは俺もこの人も同じっちゅうことやろか。

(もう薬が効いたかもしれへん)(ゆきのせいで布団が熱過ぎるわ)



(20091106)


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