honey | ナノ


 


 09.



眼が覚めても
君が居て、それが幸せ


honey
pulsate.9 呆れちゃいました。


あの人が俺の家に転がり込んで3日目、月曜の朝。
起き上がるのも顔を洗うのも億劫やのに、そんな中聞こえて来たのは『味噌汁の具は何が良いー?』っちゅう厭に張り切った声。同棲したらこんな感じなんか、そんな事を思う余裕もなく豆腐と一言だけ伝えて洗面台へ向かった。


「はぁ……」


水を顔に掛けると漸く活性化始める脳内は、思い出したくもない昨日の一連が浮かんだ。しょーもないし鬱陶しいし気持ち悪いし、早よ忘れたいのにそういう事に限って記憶は鮮明なんや。ほんまたいぎい。今日学校があるんもたいぎい。
そんな欝な気持ちでリビングへと味噌汁の匂いに誘われた。


『光っ!今日はちゃんと言われた通りだしの素と味噌溶かしたから大丈夫だよ』

「………………」

『ひかるー?』


まぁ、だしの素と味噌を溶かしたんはええわ。そこまではええ。
せやけどさっき俺は豆腐って言うたはずやん。俺の眼には味噌汁の中にジャガイモが入っとる様に見えるんやけど?


「…何でジャガイモやねん」

『ああ!何かジャガイモが食べたくなった』

「ほな何でわざわざ俺に聞いたんや…嫌がらせとしか思えへんわ」

『別に嫌がらせじゃないし…』

「ハァ…面倒臭」


低血圧なん知ってるやろ?極力寝起き一番は話したくないことも分かっとるくせに面倒臭いねん。決まってんなら聞いてくんなっちゅう話しやわ。別に豆腐でもジャガイモでも味噌汁の味がするなら何でもええし。


『……怒ってる?』

「は?」

『絶対怒ってるじゃん光…』

「怒ってへんし」

『嘘ばっかり!!』


朝からきゃんきゃん喚く相手をする気にもなれへんくて、適当に腹を満たした後「ごちそうさま」と告げた。初めてかもしれへん。普通に味噌汁が味がしたんは。ちょっとだけ、成長してんねんなって感動したのに目の前に座るあの人は顔を歪めて俯いたまま。


『そんなに怒らなくても良いじゃんか…』

「は?」

『光って短気過ぎ!意味分かんない…』


俺からすれば意味分からんのはそっちやねんけど。さっきから俺は怒ってへんて言うとるやろ、寧ろゆきが怒っとるように見えるし。


『アタシはね、別に、』

「はいはい分かった分かった、行って来ます」

『ちょ、光!!』

「あ、今日バイト無いけど部長に会うてから帰るわ」

『ひ、光!』

「ほな」


時間に余裕も無いし、頭も冴えんし、帰ったら相手してやろうと家を出ると“短気戦隊短気マン、短気レッド”とか意味分からんメールが届いて溜息がひとつ零れた朝。

(明日もジャガイモの味噌汁でええかなー)(そんなん言うたらまた図に乗るんやろうけど)(まあええか)



(20091106)


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