honey | ナノ


 


 05.



想いが大きくなるほど
不安も大きくなる。


honey
pulsate.5 会っちゃいました?


「有難うございましたー」


あれから日付が変わって日曜日、バイトは昼間のシフトでコンビニのレジに立っとる俺。
適当な業務言葉を並べて頭を下げるけどぶっちゃけそれどころやない。頭の中は昨日あの人に届いたメールでいっぱいやった。誰が、何の為に。否、そんなん分かり切ったことや。あの人の事を好きな男が自分の想いを遂げる為に、そうに違いない。メールを送って来たのが昨日やったのも俺が一緒に居ったから。あの人を尾け回してるなら俺が居ることすら容易に分かるやろうし、ソレを見て感情が爆発したんやろう。

あー、ほんまストーカーとかタチ悪い。こうしとる間もあの人は何してるんか、そんな思考が駆け巡る。本人はあっけらかんとしてて俺が大袈裟なだけかもしれへんけど…ハァ。
どうしようもない問題に頭が痛くなりそうで、客も引いて来たし奥で一服でもして頭を冷やそうとすると、


『20番の煙草ひとつ下さい』


タイミング悪く現れた男。
暇そうにしとる隣のレジに行けばええのに鬱陶しい。そうは思ても雇われ身で口に出せる訳なくて、渋々陳列された煙草から20番に手を伸ばした。


「420円になります」


俺と同じ煙草やん、男が吸うのは珍しい銘柄やのに。なんてレジを打ってピッタリの小銭を受け取ると、


『どうも』

「……………」


スーツに身を包んだ中年の男はシワを寄せて俺を映した。憎悪さえ感じるその視線に背中がピンと張って、嫌な予感が、した。

まさか、やけど…
アイツがゆきを…?
せやけどわざわざ俺の前に顔を見せたりするんやろうか。ただの憶測でしかないのにあの視線を記憶に焼き付けて、ドアから出て行く背中を眺めてた。


『……ん!ざい…ん!』

「、」

『財前?顔引きつらせてどないしたんや?』

「、部長…?」

『俺が店に入って来たんも気付かへんて、体調でも悪いんか?』


俺の全神経があの男に向かってるといつの間にか店に来たらしい部長の声でやっと気が付いた。
俺がコンビニでバイトを始めてからちょくちょく顔を見せるけどそれでも1週間ぶりで、未だに“部長”という顔は存続してた。部長の愁眉を見て頭を振ると漸く緊張が解けた気がする。


「今日は謙也先輩と一緒やないんスね」

『ハハッ、そないずっと一緒に居る訳ちゃうしな』

「彼女作らへんし、女より謙也先輩のがええんかと思てましたわ」

『こら。ええ加減な事言うたらあかんやろ』

「すんませーん」

『それより財前、ほんまに大丈夫なんか?』


適当な冗談ではぐらかしたつもりやったけど部長はあくまで部長で。


「……ストーカー撃退法て何なんスかね」

『、え?』

「大概にして欲しいわ」


隠しても無駄やと踏んだ俺は部長を味方に付けた。

(ほんまは俺1人で解決したかった)(せやけどゆきを1番に考えるなら、)(何や悔しい)



(20090930)


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