思い当たる理由ひとつ、
好きってだけ
honey
pulsate.4 心配しちゃいました。
『ねぇねぇ光ー?』
「なん?」
あれから適当にだらけた後、街をぶらついて外食をすれば課題の為に机に向かってた。
外へ出た時に取って来た無料配布の求人誌片手に『あー』とか『うーん』とか唸ってたゆきは目ぼしい職がなかったんか、求人誌を放って俺の肩に顔を乗せる。課題さえ無かったらこのまま机をベッドへと化してもええのに生憎そういう訳にもあかん。大儀や、めっちゃ面倒臭い。せやけどまぁ、休憩するんも有りやろうと手を止めた。
『勉強大変そう』
「別に。時間は掛かるけど内容は大した事無いし」
『そっか。頑張ってね』
「…何や話ししたいんちゃうん?」
俺が課題をやっとる手前、自分が呑気にしとることが後ろめたいんか、中々本題を出さへんゆきに煙草に手を伸ばしてから視線をぶつけた。
一瞬だけ瞠若を見せると、へらっと苦笑しながらライターを渡された。
『前からだけど、光って勘が良いよね』
「ゆきが分かりやすいだけやろ、それに勘が良いのは部長の方や」
『あー蔵…蔵はね一歩先の人の気持ちを考えれるって感じかなぁ?光は見透かしてるって感じ?』
「なんやねんその差は…」
『あははっ』
「で?」
チリチリ燃える煙草の灰を人差し指でトントンと落として喰わえようとすると、ゆきの言葉に今度は俺が瞠若した。
『今ね、知らないアドレスからメールが来た』
「フーン」
『“別れろ”って』
「フーン……、は?」
別れろって、俺等のことなん?
否、大方ゆきが登録し忘れた相手からのメールで何かの話しの続きなんちゃうんか?まさか俺とゆきに別れろってメールする物好きが居るとは思えへん。
『これ、ホスト見たことないしサブアドレスだよね?』
「……………」
せやけど渡されたゆきの携帯には確かに普段見慣れへんホスト名。更には@以前もご丁寧に“death”とか。確実に俺等に関してなんやと思った。
『なんか、気持ち悪いよね…』
「ハァ…」
『光?』
「こんなん削除したらええねん」
『あ、』
「気にした方が負けや」
『…うん。そうだよね』
許可も無く勝手に削除ボタンを選んで携帯を返すけど、ゆきの顔は意外にも晴れ晴れと笑ってて。
「あんなメールは無視してー、アタシちょっとコンビニ行って来る!何か要るモノある?」
『俺も行く』
「え、課題は?」
『あんなん直ぐ終わるわ』
「でも時間掛かるって、」
『俺やから直ぐ終わる』
昨日ゆきが言うてた尾行が勘違いやなかったから。加えて今日のメール。
自分で言うたくせに、ゆきより俺の方が気になって仕方なかった。大袈裟やとしても、過保護やとしても。
(っちゅうか昔からあの人に惚れる男って変人ばっかりや物好きの部類に入るししゃーないんか)(あー頭痛くなる)(……っちゅうかせやったら俺も変人…)(ないない)
(20090925)
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