君と繋がる時間は
時が止まった永久に見える
honey
pulsate.2 欲情しちゃいました。
「…で?」
『、へ?』
俺の胸元に頭を置いて垂直になったら腹に掛けてゴロゴロゴロゴロ転がった。
幾ら情事後と言っても3年も付き合えば慣れるもんか、ゆきは俺のTシャツと下は下着だけっちゅうラフ過ぎる格好でも特別気にした様子もなく間抜けな声でこっちに視線を向ける。
『なになにー、光何か言った?』
「仕事、何があったんかって聞いてんねん」
『あー……』
思い出したくなかったのに、そう言いたそうに起き上がってベッドの隅で体育座りをして。
俺は俺で身体を横にして枕に肘を付いた後、言葉を続けた。
「別に続けたい訳ちゃうかったんやろ?拗ねる必要ないやん」
『……それとこれとは話しが違うもん…』
さっきまで散々やらしい声出して上機嫌やったのにボソボソ呟く声は不満と嫌悪が吐き出されてるのと変わらへん。
「辞めたい辞めたい言うとったやん」
『でも当てがないのに辞めたらアタシ本当に生活出来ないじゃん…』
「何で急にまたクビやねん」
『不景気だから人員削減するんだって…アタシ他の人に比べたら新米だし仕事も出来る訳じゃないし良いカモだったんだよ』
「……………」
ハァ、溜息が出そうになるくらい『良いもん…』『どうせアタシなんて…』って愚痴りまくりで、見兼ねた俺はゆっくり身体を起こした。
これ以上不貞腐れたら困るししゃーない。久しぶりやし甘えさせたらななぁとか。
「ゆき」
『、』
「仕事無くてももっとええもん持っとるくせに」
『……なーに、光だとか言いたいの?』
「正解」
『やだ自分で言うとかあり得ない』
体育座りした身体を後ろからすっぽり包んでやったら悪態つく言葉とは裏腹に俺の腕をぎゅっと掴んできて。
こういうとこ、結構好きやったりする。
「っちゅうか、やっぱり遣りたい仕事遣れっちゅう事なんちゃう?」
『…………』
「嫌々やっても目標が無いとプラスにならんしな」
ゆきが高校3年の時、進路に悩み悩んでたとこ背中を押したのは俺やった。
求人誌に載ってた化粧品販売員の記事を見せると本人もピンと来たらしくヤル気になってたのに、いざ面接を受けたら不合格。仕方なく小企業の事務員として就職した。
特に遣りたい事がないなら目の前にある仕事をこなせばええけど生憎遣りたい事を我慢してたからストレスは募る一方で、会う度に『もう仕事行きたくない、辞めたい』って言うとったんを思い出して。
「あの時は落ちたけどもう1回頑張るええ機会なんちゃう?」
『……応援、してくれる?』
「しゃーなし」
『……仕事決まるまで此処に居て良い?』
「俺が学校行っとる間、就職活動頑張るんなら」
『うん…頑張る…』
漸く少しはヤル気になったらしく、身体を反転させて抱きついてきたり。あんまり甘やかし過ぎるんもどうかと思うけど、合わせて背中に手を回すと何倍も嬉々に笑うもんやから止められへん。
『ね、光』
「ん」
『アタシ、光が居れば生きていける!』
「…………」
挙句にはとどめの様に言うてくるとか、俺もお手上げやっちゅう話し。
「も1回」
『え?』
「もう1回ヤるで」
『え、また?!』
「うっさい黙れ」
明日も1日中こうしてたら本望やのに。そんな事思いながらゆきには緩いTシャツに手を伸ばした。
(俺が仕事しとったら永久就職出来たのに)(今度は言うたらんけど)
(20090822)
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