honey | ナノ


 


 10.



愛が眼に見えるって
いつどんな時?


honey
pulsate.10 惚気ちゃいました!


今日くらいあの人の就職先が決まればええけど。そんな思いで授業を受けて、放課後部長と待ち合わせをした土手沿いのテニスコートへ向かった。
無料開放施設やからそこでは謙也先輩と良く打ってるらしくて、今日もまた謙也先輩が居るんかと足を進めると携帯だけ片手にラケットも持たへん部長が居った。


「あー今日も謙也先輩と一緒ちゃうんです?」

『、財前』

「あれですか倦怠期」

『誰がや』


振り返って缶コーヒーを投げてくる部長に、やっぱこの人は無駄に気が利くんやなぁって。


「今日はテニスしてへんかったん?」

『謙也がインフルエンザやからなぁ』

「ぶっ」

『財前、そこは笑うとこやなくて心配するところやで』


謙也先輩が寝込むとか想像しただけで笑える。部長やって建前はそう言うけど絶対笑ったに違いない。やって部長の顔、半分笑とるもん。


『で、ゆきん事は解決したんやってな?』

「はぁ…お騒がせしました」

『聞いたでー?財前がストーカーされてたんやろ?罪な男やなぁ』


クックッ、と肩を揺らす部長にイラッとして。缶コーヒーを一口含んだら大袈裟な真実を伝えたった。


「せやけどあの男、部長も気に入っとるらしいですわー」

『え?そんなんある訳無いやろ、第一面識無いしな』

「昨日ゆきと一緒のとこ見て、俺が無理なら部長に乗り換える言うてましたわ」

『は、』

「部長は彼女居てへんしー絶好の獲物スね」


半分は嘘ちゃうし可能性も十分にあるし。今度あの男に会うたら部長を進めとこかなぁって。


『阿呆な事は言うもんちゃうで財前、』

「はいはい、部長が紹介してって言うてたって伝えたりますわ」

『余計な事せんでええから!それより、今度はゆきと喧嘩したらしいやんか』

「喧嘩?」

『ゆきから、光が怒ってるーってメールあってん』

「………………」


今朝のことを言うとるんか。別に怒ってへんし、そう言うたのにほんま阿呆な女や。


『早よ仲直りせなあかんやろ?』

「別に喧嘩ちゃうし…ゆきの勘違いですわ」

『、そうやったん?ゆきの口振りでは今日家に帰って来おへんかもしれんて言うてたから凄い喧嘩したんか思ってんけど』


あそこは俺の家やのに何言うてんねん。俺に実家帰れとでも言いたいんか、っちゅうか何を思ってそんな大事になってんねん…こんな事なら昼間にでもメール打てば良かった。


『あ、』

「、」


朝もちゃんと相手せなあかんのやなぁって携帯を取り出そうとすると、部長の間抜けな声が聞こえてそっちへ向くと土手に立ってたのはあの人。
余計な気を回せた部長が呼んだっちゅう訳?


『光レッドーっ!!』

「……………」


レッドの単語に、部長は理解出来ひんと俺を見たけど、俺やってそれは理解出来ひん。朝のメールまでまだ引き摺ってるかと思うとでかいでかい溜息が溢れた。
10メートル程離れた場所から勢い良く息を吸って次は何を言い出すんかと思えば、


『光ーっっ!!アタシ明日のお味噌汁は豆腐で作るから!』


もう一度部長からは不可解という視線を浴びた。


『良く考えたの、今日はアタシが悪かったと思ってるし、光が好きなもの食べて欲しいって…だからアタシの事捨てないで!家に帰って来て!!もうジャガイモの味噌汁作らないし、変な味付けしないようにも頑張るから!それに今日、アタシ就職先決まりそう!行きたかったとこ、明日面接だしそれも頑張る!だから光ー!!』


「あの阿呆何言うてんねん」

『ハハッ、よう分からんけどそれだけ財前が好きやっちゅうことやろ?めっちゃ愛されとるやんなぁ?』

「ハァ…」


結局溜息は止まらへんくて、勘違いに付き合わされる俺は損しか無い気がするけど。


「部長、行って来ますわ」

『うん、そうしたり?仲良くな?』

「言われんでも」

『、』

「俺があの人にベタ惚れなん知ってるやろ?」

『……せやな』


拍子抜け、そんな瞠若した部長を尻目に土手を駆け上がった俺はあの人に言うた。


「一緒に帰ろ」


帰る場所が同じやなんて、改めて考えると小さいけど大きい幸せなんやと気付いた。

いつかを夢見て、早くゆきが“財前”になればええってそう思ったのは秘密。



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とりあえず完結です。
結局何を書いてるんだっていう内容でどんどんヒロインちゃんがズレてしまったような…
またリベンジとして今度は結婚前後の続編が書きたいです(懲りなくてごめんなさい)
お付き合いして下さった皆様、有難うございました!

(20091107)


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