too near | ナノ


 


 06.



こんな些細でも
幸せのカタチ。


too near
heart.6
That day when shape of
happiness was seen.


『ねぇねぇオサムちゃん、』

「なんやぁ?」

『これが良い、これが欲しい』

「……………」


買い出しの途中、名前は高価買い取り安価売り出し中と書かれた看板の店の前で足を止めてガラスの向こうにあるブランドバッグを指さした。

えーと、0が5つも並んどるけど金額のでかさ分かっとるんか?


『やっぱりブランドは憧れだよねー…』

「名前ちゃん。此処に並んどるのは中古品やねんで?それは嫌やろ?」

『えー!じゃあ新しいの買ってくれるの!?』

「買うたる買うたるて言えるくらい高給取りやったらええねんけどなぁ」

『実際いくら貰ってるかなんか高校生のアタシには分かんないけどさ、オサムちゃんはケチだし結構な貯金ありそう』

「無い無い、あっても貯金は使たらあかんもんや」

『絶対隠し持ってる系だー白状しなさい!』

「うんー?名前ちゃんがお嫁さんになるならオサムちゃんの全て教えたるでー?」

『お嫁さんー?彼氏と別れたら考えても良いよ?』

「言うたな?オサムちゃん本気にすんで」

『あはは!別れないけどね!』


それがどれだけしょーもない口約束やとしても、信じるに値せえへん戯れ言やとしても、俺にとっては本気になる価値のある言葉やった。寧ろ、名前の惚気の方が冗語になればええって、俺がそうさせたるって思った。


『あ、』

「今度は何見付けたんやー?」

『うーんとね…あ、オサムちゃん、幾らまでなら買ってくれるの?』

「遠足は500円までって決まってんねんで」

『遠足じゃないもん!』


そう言って500円玉を手渡しながら、3メートル先にあるクレープ屋を映して大方あそこでクレープ買うんやろうなとか安易な想像して。


『500円かー、じゃあアタシが300円出してあげようじゃないですか』

「最近のクレープはそんな高いんか?」

『え?クレープ?』

「クレープ買うんちゃうの?」

『違うし!』

「ほな何、」

『ちょっと待ってて』


予想は大外れやったらしく、クレープ屋の2軒出前にある店に入ってった名前を待つこと3分。
食べることが幸せらしいアイツやのにクレープに眼がいかんっちゅうのはめっちゃ意外や。そんな事を浮かべて煙草を吹かしてると小さい袋を握り締めて上機嫌で出て来た。


『オサムちゃんオサムちゃん、携帯貸して』

「携帯?」

『良いから貸してって』

「、ええけど」


何買うたん?聞く間も与えてくれず、俺の携帯を眺めて『ここだ!』とか。何が始まるんやろ、とか思たら袋から小さなぬいぐるみが出て来て俺の携帯と名前の携帯にストラップとして付けられた。


『はいどーぞ』

「、俺のも買うてくれたん?」

『そうだよ、結局アタシも500円出したんだからオサムちゃんの分はアタシが買ってあげたことになるんだよ』


ぬいぐるみを見てはえらい不細工な顔しとるクマやなぁとは思たけど、


「ありがとう、お揃いやなぁ?」

『オサムちゃんがアタシの事好き過ぎるからお揃いにした』

「そら可愛がらなあかんわー」

『因みにオサムちゃんのクマの名前は“名前チャン”だからね』


名前までそう付けられと一気に愛くるしいと思って。
わざわざお揃いにしてくれたこと、自分の財布まで開いてくれたこと、全部が嬉しかった。

元々男やし、歳を取るとお揃いとか物に対して執着心なんや減るのに、名前のせいでそういう子供染みた情感さえ慾として生まれた。

学校に戻って白石に一緒に怒られたことさえお揃いやなって、もし口にしてたら名前もお揃いが増えたって思てくれるか?



(20090817)


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