too near | ナノ


 


 05.



俺の情感は全て
君だけのもの、君のせい。


too near
heart.5
Because I decide it, you only
have to become easy by you.


気が付いたら、名前とオサムちゃん2人の姿がテニスコートから消えてた。


「……………」

『名前先輩ならオサムちゃんと買い出し行きましたわ』

「、」


テニスコートの中心からくるっと360度見渡した俺に、見透かす様な笑いを向けてくる生意気な後輩。
財前の顔を見て口がへの字に曲がってしまいそうなんを堪えて愛想笑いを浮かべる。


「余計なお世話」

『どうやか。テニスどころやないーって言いたそうでしたけど?』

「財前はもっと先輩を敬うべきちゃう?」

『生憎正直者なんですんませーん』


クックッと喉でせせら笑う姿にはもうお手上げで。愚痴を溢すみたく溜息を吐き出した。


「どうせ駄目やのにな」

『…………』

「名前には彼氏が居るし、めっちゃ好きなん分かるやん」


自分が動かへんからってオサムちゃんに八つ当たりしたり。情けないのは分かるけどホンマの話やん。


『意外スわ』

「え?」

『部長が諦めとるんは見え見えやったけど実はそうでも無いんスね』

「、は?」

『諦めとるんなら名前先輩がどうしようとオサムちゃんがどうしようと関係無いやん。独占欲丸出し』

「………………」


独占欲丸出し?
別にそんな意味やない。どうすることも出来ん状況に苛々して、身勝手なオサムちゃんに苛々するだけやねん。名前の事を想うなら引くんが当然やろ…?


『まぁ、部長がどうするんかどうしたいんかなんや自由ですけどね』

「俺は別に…」

『それなら俺は何も言いませんわ。早よ他に良い人出来るとええですね』


財前がどういうつもりでその言葉を口にしたんかは分からへんけど。俺には嫌味としか取れんかった。
俺やって好きで名前を想とる訳ちゃうねん。消したいのに想いは消せへんくて、忘れたいのに名前が浮かぶ。楽な方に行きたいのに、立ち止まるしか無いんや…


  □


「あ、」

『蔵、ただいま!』

『白石すまんなぁ、名前も引っ張ってってしもたわー』


それから暫くして帰って来た2人は揃って上機嫌やった。


「…名前、行くなら行くで一言あってもええやろ?」

『うんごめん。引き止められると思ったから黙って行っちゃった』

「当然や。オサムちゃんも、名前がマネージャー業あるの分かっとって連れ出すんあかん」

『悪かったな白石』


何でこんなに怒りたくなるんか。
何でこんなに遣る瀬ないんか。
ぐるぐる渦巻く感情が頭痛さえ引き起こしてる。

これ以上口を開くと余計な事を感情論にして吐き出してしまいそうで「もうええから仕事してな」と済ませた。財前の一言が無かったら違っとったかな、とか考えてみたけど、


『本当に一緒に怒られたね』


後ろからあどけなく言うた名前の言葉で、うやむやした気持ちは名前のせいなんやと思った。
彼女が性格が好きやのに、もう少し彼氏だけに懐いててくれたらって。他の男に甘い顔せんかったらって。
忘れさせてくれんのは名前の方や。

せやけどもし、彼女が彼氏以外に笑わへんかったら俺は逆にオサムちゃん以上、必死になってたと思う。彼女を好きにならん訳が無い。
切っても切られへん矛盾感情は俺の眉間にシワを作った。



(20090810)


prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -