04.
紡がれる好きは
かけがえない宝物。
too near
heart.4
Memories do not forget and
are carved.
『オサムちゃーんっ!』
パタパタ、バタバタ、音を立てて走って来る名前は可愛い。深い意味が無くても白石の元から走って来てくれる、それだけで優越感で笑声が溢れて抱き止めたくなる。現実は違ても俺の名前やー、なんて。
「やっぱり名前ちゃんは抱き心地満点やなぁ」
『オサムちゃんも中々ですよーぅ』
「そら良かった」
『っていうか何か用事?』
顔を上げてとぼけた様な名前に「めっちゃ可愛えわぁ!」ってもう一度ぎゅうっと抱き締めて、ちゃうちゃうと我に返ってから腕を緩めた。
「オサムちゃんとデートしよか」
『え?今から?』
「せやでー今から。白石にあれが足りんこれが足りんて言われて買い出し行かなあかんねん」
『買い出しはデートじゃないんですけどー!』
「2人で歩けばデートやデート、名前が欲しい物、1コだけ何でも買うたるから」
『、本当に!?』
「オサムちゃん好きーて元気になってくれるんならホンマや」
『うんうん好き好き、オサムちゃん大好きっ!』
「ええ子やなぁ!オサムちゃんも大好きやでー!」
貢ぎモノの代わりやとしても好きって言わせたい。好きやって言って貰いたい。
卑怯やとか、そんなん嬉しくないとか、周りからは批判的な言葉が飛んで来そうやけどええねんこれで。俺は名前からの“好き”で報われる。もっと名前を好きやと思えるから。
『でも、アタシが行っても大丈夫かな』
「白石が向こうで謙也と話とる今がチャンスや、行くで」
『うん!』
手を繋いだ後、こっそり白石の眼を盗んで走ったらそれこそ秘密めいた恋愛みたいで擽ったい。もし、俺と名前が上手くいったら秘密を突き通さなあかん。それを今に置き換えると緊張感が心地良くて自然と顔は緩んでいった。
なぁ、楽しいと思わへん?
『学校抜けたら平気だよね』
「何とかバレずに来たなぁ」
『でもさ、帰ったら蔵が怒りそう…』
「せやなぁー…」
白石が怒り始めると手が付けられん。そういう意味で名前は憂愁になるけど、
「その時は一緒に怒られよか!」
『―――うん!』
俺も付いてたら怖いなんかないやろ?
白石が本気で名前に怒ることはないやろうけど、確実に怒られるんは俺やろうけど、2人一緒なら怒られても2人の思い出になんねんで。彼氏やなく、俺との思い出、頭に入りきらんくらい作らせたいんや。俺だけで埋まったらええ。
『ねぇねぇオサムちゃん、』
「うーん?」
『アタシの事心配してくれてたの…?』
どっか気を使てるような、怖ず怖ずしながら聞いてくる名前を一撫でしてやって。
「言うたやろ?」
『、え?』
「俺は名前が好きやーって」
『う、ん?』
「名前は、俺が笑かしたるからそんな顔せんでええねんで」
『………………』
「オサムちゃんの超純粋恋心や!」
『…っぷ!あははは、オサムちゃん超可愛いーっ』
「当たり前や、少年の心で溢れてんねんから」
『いつか年齢もサバ読む気じゃん?』
「オサムちゃん歳取らへんもん」
都合良すぎー、そんな突っ込みとは裏腹に名前は繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
有難うは掌から伝わった。
(20090804)
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