12.
溢れだした
一粒の想いは大き過ぎた
too near
heart.12
Mind of me who kept singing
such true love
『……………』
身体が酸素を欲して一瞬口唇から離れると、名前は眉を寄せて間抜けな顔やった。ずっと重ねてたいって思たのに怪訝やなくてそんな顔見せられたら笑いが溢れてしもて止まらんなったやろ?
「ハハハッ!名前ちゃんはほんま可愛えなぁ!」
『え…ちょ、笑うとこ間違ってない…?』
「間違うてへんでー?」
『き、キスした後に笑われるのはちょっと…傷付くんだけど…』
空が碧く、虹色みたく見えたのは名前がそれだけ可愛い証拠。灰を流したことすら謝りたくなって、太陽さえ眩しくてしゃーない。屋上に居る2人、たった2人だけのこの時間が永遠やったらええのにぁって。幼心を翳して帽子を取った。
『、オサムちゃん?』
「オサムちゃんの我儘訊いてくれておおきになぁ?」
『……オサムちゃんはさ、』
「うーん?」
『アタシが好きなの?』
帽子を取って正解やった。
強い風が俺と名前を包んで髪の毛と服をユラユラ揺らす。この暖かな場所で風の薫りを感じたら、素直に出て来る言葉が擽ったい。
「好き」
『、』
「っちゅうか…愛やなぁ」
『、愛…』
「せやでぇ?名前ちゃんが彼氏の事好きなようにオサムちゃんも名前ちゃんの事好きで好きで、大好きで愛してんねん」
また何を阿呆言うてんねん、そう思われても仕方ない言葉に渾身の愛を込めて。これが俺。これが渡邊オサムから彼女に送る愛や。
めっちゃ好きやで。
名前ちゃんが彼氏を好きって思うより、彼氏が名前ちゃんを好きって思うよりずっとずっとでかくて重たい気持ちやから。
『オサムちゃんは、何だかんだ言って冗談なのかなって、思ってた…』
「そうかー性格の問題やろか?」
『うん…でもね、好きで居てくれてるって思ってた』
「うーん。難しい事言うなぁ?」
『オサムちゃんはね、アタシが我儘言っても何しても全部許してくれるって、笑ってくれるって分かってたから甘えてたんだと思う』
「うん」
『だから…その…』
『うんー?』
小さく小さく、
(嫌、じゃなかったかも)
ほんのり顔を赤くした姿がほんま、十分過ぎる幸せやった。
『だ、だってオサムちゃんが死んじゃうのは、嫌だし!』
「ハッハー、名前ちゃんにそんな風に思って貰えるとか嬉しいなぁ」
『……もう、あんな危ない事しない?』
「うん。名前ちゃんがオサムちゃんを見張っててくれるならせえへんで?」
『見張るってね…』
「せやけどずっと甘えるんやろ?」
『………………』
「あれ、違たか?」
『違わない!』
ぎゅっと背中に飛び付いて、部室へ向けて押して来る体温は、こんなにも愛しくて心地良い。
ポケットに手を突っ込むと触れたストラップの感触が、余計に俺の眼を細めた。
(20091105)
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