11.
幸せは波の向こう
君の瞳に映っているのは?
too near
heart.11
It was possible to reach it at
last because you were always in the next.
自分からミーティングや言うたくせに、部室で幾ら待ってても姿を見せへんオサムちゃんへと溜息を吐いて、気分屋やからなぁなんて部員達に通常通り朝練を始める様促した。
自分も適当にアップをして身体を暖めて、そろそろ来てもええんちゃうかなぁなんて部室に戻った時やった。
そこには誰も居てへんくて、机の上に置かれた携帯が着信を告げる。
「名前の携帯やな…っ、」
ディスプレイに表示された名前に自然と顔は歪んで、思わず受話ボタンを押してしもた。
“陽平”
その名前やからこそ名前に何も告げず電話を取るなんやしたらあかんことやのに。ドキドキ鳴る心臓と共に、携帯を耳元へ当てた。
「…………」
《もしもし、名前?》
名前は今居てへん、
伝えなあかんのにそのまま続ける相手に俺は耳を疑った。
《まだ怒ってんの?いい加減機嫌直せば?今回が初めてじゃねぇしお前ももう慣れただろ?》
「―――――」
《何だかんだ言ったって俺は名前が1番だって思ってるし、お前だってテニス部の奴等と仲良くやってんだろ?お互い様じゃん》
初めて聞く声やのに嫌悪しか無くて、理性が切れた気がした。
この男、何言うてるん?
浮気初めてちゃうとか、名前ん事も疑って…こんな男に名前は傷付けられたんか?
過ったのは昨日の泣き顔と暖かいキスで、独占欲が噴き出した。
「ふざけてるんか…」
《は?誰アンタ》
「俺はテニス部の白石や」
《あー名前の浮気相手ってこと?修羅場とかウザイんだけど》
こんな男のせいで名前はせんでええ辛い思いして、こんな男の為に俺は我慢してたんかと思うと腹立たしい以上の何物でもない。
「俺と名前はそんな関係ちゃう」
《いいって別に。謙遜しなくても》
「謙遜なんやしてへん、ほんまの事や。名前がアンタの事を好きなんもほんまやしな」
《へぇ。良く分かんないけど、それならアンタは俺に何の用な訳?》
「名前は、渡さへん」
《は?》
「お前みたいな男が相手されてええ様な女ちゃうねん!」
《……何、まさか片想いしてるってやつ?うわーそれはお疲れ様》
「余計なお世話や!ええから手引いて貰うからな!」
勢い良く電源ボタンを押して携帯を握り締める。崩れるみたいに壁に凭れてしゃがめば名前が最近付けたらしい、ストラップには大き過ぎるクマがユラユラと揺れて劣等感と後悔が溢れた。
「やって、しもたなぁ…」
ほんまなら告げる筈なかった気持ち。名前の事も考えてやれずに走った気持ち。
携帯なんか取るんやなかった。名前の好きな男は完璧なイメージで、そのままの理想像でありたかったのに。
せやけど知ってしもた以上このまま見過ごす事は出来ひんくて…名前が戻って来たら何て話そうか、告白してもええんやろうか、狭い天井を見上げて眼を細めた。
(20091030)
←