04.
分かり合える術を教えて欲しい
想いを繋げる為には何が必要なのか
04 スプリングが放つ声を
放課後、家に帰る前に名前と話したい。そう思いながら下駄箱で上履きからローファーに履き変えた。アイツは何処に行ったんじゃろ、360度眺めても姿が見えんしもう帰ったんやろうか。
“ばいばい”すら言ってないのに居らんなるとか、今日もオサムちゃんと予定があるって事か。溜息がちにローファーを地に投げた時やった。
「、」
ゴン、と鈍い音を立てて跳ねた靴は誰かの頭に当たったらしい。良く見てなかった自分も悪いけどこんなとこで頭抱えてかかんでるコイツも十分原因がある、理由を相手に押し付けてローファーを拾おうとした時やった。
「、名前、じゃったんか…悪い、頭に汚いモノぶつけてしまったなぁ」
『…………』
「―――――」
謝るべきか、もう放っておこうか、足跡の付いた頭を尻目にすると見慣れた鮮やかな髪が名前本人やと告げてた。
探してた相手はこんなとこに居ったんかと焦ってみたけど、振り返った名前を見て一層瞠若は深まった。
名前、その顔、
泣いとったんか…?
「…何が、あった?」
『…言いたくない』
「俺にも言えん事なんか?」
『……………』
「白石、には…話せるんか?」
『…蔵には……』
別にそういう意味じゃない、顔を伏せると声を出さず肩を揺らした。
泣き足りん。それだけを言いたいみたいに。
「…名前、俺の家来るか?」
俯いたまま首を縦に振った名前を見て、手を握った俺は家に向けてゆっくり足を動かした。
どうしたもんかの。想像出来ると言えば出来るけど、それはオサムちゃんの事じゃし、今の今までオサムちゃんが名前を泣かせる様な事はしたことないし。
よっぽど何かがあったんか…眼を赤くするだけで口を開こうとはしないアイツを見ると俺まで億劫になった。
「何か、飲むか?」
部屋に上がっても眼を真っ赤にしたまま沈黙を続ける名前に最早お手上げ状態で。
結局ご機嫌を取れるのも全部オサムちゃんの仕事なんじゃろうって…あの教師は今頃何しとんか、文句を交えて冷蔵庫へと立ち上がった。
「アイスコーヒーしか無――、」
『やだ…』
お手上げ、じゃったのに背中に縋り付いて来る姿を見れば愛しさが込み上げて。腕を引っ張って腹の前まで持って来たら背中に名前の体温が広がる。
「名前、何があったんか話してくれんか?」
『まさはる…』
途端、俺の身体に体重を掛けるから狙い通りというみたいにベッドに転んだ。スプリング音と一緒に揺れる身体は婬猥そのもの、馬乗りになった名前を前に俺の理性もギリギリのラインで寸止めで、虚ろな眼に誘われそうになると耳元で囁かれた一言に時間が止まった気さえした。
『オサムちゃんにフラれた…』
(20090922)
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