secret love | ナノ


 


 13.



どこまでも続く道に
咲いていたのは小さな華


13 太陽が揺らす花びら


結局、警察から申し訳ないと言う謝罪と一連の流れを説明されて俺は留置所から出された。
押収された携帯や鞄も無事に返ってきて、例の男が警察から逃げる為に薬を俺の鞄に入れたらしいけど…正直そんなことはもうどうでも良い。

元より自分に非が無い事は分かってた事やし、そんな単純なもんやっちゅうのも理解してた。

せやけど問題は名前や家族や周りの人間の事。名前が検査を受けたなら当然身近である家族にも何らあったやろう。警察が家に来て捜査をしたなら近所からの眼やって不信に変わる。名前やって同じことや。
こんな俺に、愛想尽かせたんちゃう…?


「……………」


誰だって世の中の正である警察の口から薬物所持、なんや聞いてしもたら鵜呑みにすると思う。ニュースで流れる容疑者やって“まさかこの人が”って言うてるくらいやもん。俺やって例外ちゃう。

あー…キツいなぁ…。

家で学校で、何て説明したらええんやろ。何て謝ればええんやろ。
そんな事を浮かべながら警察署の自動ドアを潜った時やった。


『くら……!!』

「――――――」

『おかえり、蔵…』


一晩ぶりに見た空は薄いブルーが広がって、中心である太陽は涙を溜めて俺の胸に飛び込んだ。

まさか、俺が出て来るん、待っててくれたん…?


『蔵、寂しかったよね、怖かったよね、1人で辛い思いさせてごめんね…!』

「……………」

『蔵の事、悪く言う警察なんか大嫌い…』


そうや。
名前を守れへんかったって批正してたけど、それよりも怖かったんや。名前が誤解して、俺ん事拒絶したらって、それが1番怖かった。


「名前…俺ん事信じてくれてたん…?」

『何言ってるの?蔵が悪い事する訳ないじゃん…もしそんな事あったとしても蔵は悪くない、皆が悪いって言ったとしてもアタシは蔵の事信じるもん…!』


なぁ、そんなんあかんわ。
意味は違たとしても、ほんまの愛ちゃうんかって勘違いしてしまう。


『今日学校行ってね、教室行ったらね、皆蔵の事……』

「うん。しゃーないわ…」

『仕方なくないもん!許せない、蔵の事そんな風に言うの許せない…』


例え彼氏っちゅう立場やなくても、結ばれる思いやなくても、俺はめっちゃ幸せな男やなって。
一方的に迷惑掛けて、一方的に怖い思いさせた言うのに…何でそんな優しいん?文句言うたってええんやで…?


「名前」

『、』

「もうええから」

『、良くない!』

「ええねん。名前が信じて、俺を待っててくれた、それだけで十分やで」

『だけど、』

「俺な?今、幸せやなぁって、嬉しいねんから」

『………………』

「ありがと」


ぎゅっときつく抱き締めた身体は震えてたけど、背中に腕が回って来た時には震えは無くなって『良かった』って小さい声が聞こえて来た。


「こら、そんな引っ付いたら歩けへんやろ?」

『やだ!アタシが蔵の事守ってあげるんだから!』


ぎちぎちと音が出てしまいそうなくらい包帯の腕にしがみ付いてくる名前に「阿呆やなぁ」なんて言うけど、ほんまは嬉しくて可愛くて。名前が名前で良かった、思いながら家へと足を進めてた。


『あ、あれ雅治じゃん?』

「、ほんまや、何してんねんこんな所で―――」


(お騒がせして申し訳ありません)

インターホン越しに頭を下げて、その隣にはオカンも一緒に頭を下げるっちゅうツーショット。
何やねん、突っ込む間も無く続いた言葉に俺は瞼が熱くなった。

(お騒がせした事は申し訳ないですが、白石は無実です。それは分かって下さい)


「………………」

『雅治……』


ほんま、何やってんねん…
仁王の仕事ちゃうやろ?いずれ分かる事やし、それは俺の仕事やんか。お前が頭下げる必要なんや無いやろ?


『……やっと帰って来たんか?』

「堪忍な、仁王…」

『俺は別にええんじゃが、』

『蔵ノ介…』

「…オカンも、ごめん」


頭を上げるなりこっちに気付いた仁王は控え目に口角を上げて、対照的なオカンは名前と同じ様な顔してた。


『迎えに行けへんでごめんね…せやけど、蔵ノ介に限って有り得へんて、信じてた…』

「うん。有難う」


信じてくれて有難う
待っててくれて有難う
俺の為に頭下げてくれて有難う

言いたい事はいっぱいあるのに照れ臭くて嬉々過ぎて、何て声を出したらええか分からへん。こんな気持ち初めてや。


『蔵ノ介、ちゃんと仁王君と渡邊先生にお礼言いなさいね』

「、オサムちゃん?」

『せやで。渡邊先生はアンタの為にようしてくれたんやから…友達も先生にも恵まれてるとか、ほんま幸せやで…?』

「ちょう待って、オサムちゃん居てへんやん…」

『………………』


名前の話し通り、学校でも俺ん事が噂になってるならオサムちゃんにまで迷惑掛けたんは容易に分かる。せやけどオカンが名前を出した瞬間、仁王も名前も、顔が曇ったんが分かったから…厭な予感がした。


『白石、オサムちゃん学校辞めたんじゃ』

「―――――」



(20091029)


prevnext



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -