secret love | ナノ


 


 11.



世界に1人、
たった1人なのに


11 流星が砕けた時間


彼女を巻き込みたくない、その一心で黙秘を決め込んだ俺は留置所に放り込まれ尿検査とスクリーニングテストを要された。勿論、薬物を直に見たのも初めてやった俺から陽性闘値50ng/mlの基準を越える結果が出る訳もなく、警察は『ポン中ちゃうんか』とか、首を傾げてた。

多分、黙りを続けたからこそ疑いは濃いものへと変わったんやろうけど、こんな汚い場所へ名前を連れて来てしまう様な事があったらあかん。変な心配とか不安とか、今弱っとる彼女に余計なものは与えたくなかったんや。


『出て来なさい』

「……………」


無機質な部屋のドアが開くと今度はまた見たこともない別の警察官が俺を呼んだ。誰に当たろうが結局は同じ、俺が喋る事に対して疑心で括って、その割に俺も周りも全ての生活をかき乱すんや。俺ん事なら幾らでも調べたらええ。せやけど名前は、そっとしといたって…


『白石君やったな』

「……………」

『何も喋りたくないのは分かった、せやけど薬物してたんかしてへんか、買うたんか買うてないんかだけ聞かせてくれへんか?』

「……検査で分かったんちゃうんですか」

『白石君の口から聞きたいねん』


オトンと同じくらいの歳やろうか、深いシワを作った顔は優婉に俺を映して微笑む。荒々しい他の警察官とは、何となく雰囲気が違う気がした。


「…俺は薬物なんやしてへんし、興味無いです」

『そうか…関係無いのに、巻き込んでしもて悪かったな』

「え?」

『ずっと追い掛けてた売人が見付かって、捕まえてみたら白石君の話しするからな?鵜呑みにした訳ちゃうけど、聞いてしもた以上放っておけへんかってん』

「……………」

『鞄からは薬物が出て来たけどそこに指紋は無いし、消した様な痕跡も無い。白石君からも陽性反応は無かった。潔癖は分かった訳やけど本人から話し聞きかったんや』


この人なら話してもええかなって、ちゃんと俺の話しを聞いて分かってくれるんちゃうかと思った。


「俺、全部話します」

『、どないしたんや白石君』

「何もないからこそ話します」

『ほな、聞かせてくれるか?』

「はい…今日は学校が終わってからクラスメイトに電話しました――」


その後、名前から電話があって仁王と俺の家の中間地点で会うた。そして話しをした後、彼女を送る途中にあの男にぶつかった、正直に告げた。

机の上を両手を重ねてた警察官は微動打せず、俺が話しを続ける間ずっと優婉を崩さず黙って聞いてくれた。


『白石君、』

「はい」

『白石君が嘘を吐いてない事は分かってる。白石君の携帯も調べさせてもろたから相違点が無い事も分かってる。せやけど今まで何でそれだけの事を話してくれへんかったんか、理由を教えてくれへんかな』

「……………」

『それは言えへんか?』

「…守りたかったんです」

『守りたかった?』

「今の彼女は精神的に弱かったんで、俺のせいで巻き込みたくなかった…俺が彼女の名前を出してしもたら、一緒に居った彼女も同じ事になるんちゃうかって…」


それだけは避けたかったから。


『……白石君、今回君に罪が無かったからええとしても他人を庇う行為が良くないのは分かってるやんな?』

「…はい」

『警察官としては言語道断や。せやけど男から見れば格好良えな?』

「―――――」

『せやから教えたる』

「、」

『彼女は此処に居てへんから安心し』

「ほんまですか?!せやったら名前は、」

『警察が彼女の家に行ってスクリーニングテスト行った結果、陰性やったんや』

「―――――」


歓喜が溢れたのもほんの一瞬だけで、名前が検査を受けたと聞いた俺は酸素を吸う事も出来ひんかった。

場所なんや関係ない。
やっぱり俺は名前を守ってやることが出来ひん無力な男なんや。
急に現れた警察官に、検査を受けた名前は何を思たん?厭な不安と俺に対する嫌悪を感じたんちゃうんか…?

ごめん、ごめんな…?
彼女には届かへんのに何度も何度も謝罪を繰り返した。



(20091028)


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