(ver. yuhshi)
好き、にも種類があって
俺の好きは“妹”に値する家族愛
charm.4-1 兄貴分
約1ヶ月ぶりに連絡があったと思えば『迎え来て』4文字だけのメール。ソレに苦笑せずには居れんけど、言われるがまま駅まで足を伸ばす俺もどうなんやろう。
「名前、久しぶりやな」
『あー侑士ー、おっそい!』
「1ヶ月ぶりの第一声がそれかい」
体育座りっちゅうか、ヤンキー座りっちゅうか、スカートの下に履いた短パンを惜し気無く公開する名前は眉のシワを寄せて俺にガンを飛ばしてくる。
あーあ、大人しゅうしてたら可愛い子やのに勿体ないわ…それに短パンはマイナスポイントやで…
『だってアタシが駅に着いてもう15分だよ遅過ぎ』
「阿呆か…メール届いたんも15分前やわ…」
『それにしても侑士の顔が懐かしいんだけど』
「切り替え早いっちゅうねん。しかも“懐かしい”てなんやねん…」
『良く言えば久しぶり、悪く言えば侑士の事忘れかけた?』
「それなら“久しぶり”で済ましたらええやろ…」
溜息吐かずに居れへん会話に軽く頭痛がして、また名前の病気(家出症)が再発したんか思うと白石が不憫で仕方なかった。
「今日はちゃんと白石に言うてきたん?」
『言う訳無いじゃん!コンビニ行って来るって言って出てきたら来たんだもん』
「偉い遠いコンビニやな…せやけど心配してるんちゃうか?」
『うん、さっきからマナーモードにして気付かないフリで電話取らないのに着信止まんないからバイブすらオフにしちゃった!何かストーカーみたいでウケるよね』
「一応彼氏やろ…」
陰でストーカー呼ばわりされとる白石がホンマにホンマに可哀想で、こうやって家出する度に走り回る白石がほんまにほんまに偉いなぁって尊敬した。
せやから名前には黙って謙也通して白石に“名前氷帝に居るで”ってメール入れたったのは苦労が少しは減ったらええと思たから。
『ね、侑士、跡部君は!?』
「学校に居るけど」
『えー!迎えが…!』
「アイツに言うたら一々大騒ぎすんねんから」
リムジンが、高級車が、自家用ジェットが、なんやブツブツ言うてる名前は無視して。
っちゅうか徒歩圏内で自家用ジェットはまず無いやろ。
「学校行くんやろ?早よ行くで」
『え、ちょっと待ってよー!!』
「、」
先に歩き始めた俺に名前は後ろから右腕に飛び付いて来て『迎え有難う』とか急に素直になるから一瞬ビックリしたけど。
せやけどなんやかんや言うてもこうして甘えてくるのが可愛いから俺も甘いんやと思うわ…ま、俺からすれば恋愛対象より妹みたいな感じやけどな。
「跡部、堪忍な遅なってしもて」
『アーン?忍足遅かったじゃねぇか何処に行……、名前?』
『きゃー!跡部君久しぶり!』
部活に遅刻した俺に機嫌が悪そうな顔してた跡部やけど、名前を見るなり嬉々いっぱいっちゅう感じで。ほんま男っちゅうのは女に甘い生き物やねんな…
『やっと俺様の魅力に気付いたのか?そうか、白石より俺様が良いと漸く気付いたお前には、『あ!がっ君ー!!』』
『名前!?何でこんなとこに居んだよ!っていうか急に抱き付いてくんなよ!!』
『だってがっ君好きだもん!!』
名前の顎を掴んで引き寄せようとした跡部の手を軽く躱して岳人に飛び込んでくもんやから跡部の手がめっちゃ寂しそうやねんけど笑いは堪えて。あの跡部が面食らったみたいな顔するから笑いたいんやけど堪えて。
ポケットで震える携帯を取り出せば、
(白石、今日は迎え行かんらしいねん。迷惑掛けて堪忍なって言うてるで)
謙也から届いたメールに驚愕したんや。やって、まさかあの白石が名前を迎えに来んて可笑しいやろ?遂に愛想つきたん?否、白石に限ってそれは無い思うけど…
「名前、」
『うーん?』
「白石がな」
『蔵の話はいいって』
「ちゃうねん、今日迎えに来おへんて」
『え?』
「迎え行かんて謙也からメール来たで?」
『…嘘、でしょ……?』
「ほんま」
途端、岳人から離れて崩れていく名前は疑問半分、ショック半分、っちゅう顔で口をへの時にさせるけど……
一波乱ありそうっちゅうか、そない白石が好きなら大人しゅうしとけばええのにって、そう思う俺はちょっと冷たいんやろうか?せやけど自業自得やし少し反省したらええんちゃうかって…なんやほんま保護者みたいやな…
(あれ、宍戸さん、あそこに居るの名前さんじゃないですか?)(あ?そうだな、アイツ何やってんだ?)(何だか悲劇のヒロインみたいなポーズ取ってますね)
(おい!名前!何やってんだよ!白石にフラれたのかー!)(し、宍戸!その冗談タイミング悪過ぎや!)(え?)(…宍戸君なんて大嫌い!レギュラー落ちたくせに!)(!)
(ダブルパンチやな…)
(20090518)
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