platonic love | ナノ


 


 コンビニまで



時には叱ることも愛情
せやけどやっぱり俺は甘やかしたい


charm.4-2 コンビニまで



「…遅い、」

『白石…怒ってるん?』

「当然や!!」


ここ2週間、名前が大人しくしとったもんやから『コンビニでアイス買って来てもいい?』っちゅう言葉に快く頷いた俺が馬鹿やった。

30分経っても帰って来る気配が無い名前にどれだけ電話を鳴らし続けるけど案の定電話は取らへん。
電源切ってないだけマシかとも思うけど繋がらんなら意味は無い。


『部長ー、今日は何処行ったんやろなぁ』

「…財前、面白がるんは止めなさい」

『俺は氷帝に行ったに賭けますわー』

「賭け事ちゃうねん」

『せやけど白石、名前も最近大人しくしとったし、アイツにしては我慢した方ちゃうん?』

「…何やて謙也」

『な、何でも無い!』


阿呆な事言う財前と謙也のせいで苛々は募っていくけど確かに謙也の言うことは一理ある。
名前がああいう性格なんを承知で付き合うとるのは俺やし、名前にしたら我慢を少し覚えたんかもしれへん。
せやけどやっぱり俺だけじゃあかんのかって怒りたくなるのも好きやから。


「ハァ…ほんま困った子やなぁ…」

『、白石!侑士からメールや!』

「え?」


どうしようも無い気持ちを深い溜息として外に出すと謙也が携帯を渡してきて。

(名前氷帝に居るで)

見事、財前の予感的中にまた溜息が零れる。


『白石迎え行くんやろ?そう返事打つで!』

「待って、今日は行かへん」

『へ?白石?』

「せやから行かへんて。侑士君には迷惑掛けてしもて堪忍て言うとってや?」

『白石…』

『どないしたんです部長?面倒臭いなら俺が行きますけど?』

「たまには自分の足で帰らさなあかんねん」


せや、俺はいつもいつも甘やかし過ぎたんや。
俺が迎えに行くから調子乗っておちゃらけて…せやから心配の気持ちを殺してでも自分の足で帰って来させることも必要やねん…
名前、今日は自分から帰って来たら怒らず許したるで?せやから早よ帰ってき?
そんな思いを浮かべると鳴りだすのは俺の携帯。


「…もしもし?」

《蔵?何処に居るの?》


勿論電話の声は名前で、散々俺の着信を無視したくせに普通に掛けてくることがらしいっちゅうか…それでも、迎え行かへんことに反応してくれてほんまは嬉しかった。


「何処て、四天宝寺に決まっとるやろ?」

《えー…迎えは?》

「…名前、1人で帰って来なさい」

《や、やだ!迎え来てくれなきゃ帰らないもん!》

「ならええよ。ほな、」

《え、蔵!?》


一方的に電話を切って、少し罪悪感は残るけどちょっとは懲りたらええねん。俺かて本気で怒る時は怒るんやって分からせたらんとな?
携帯を2つに畳んでポケットの仕舞おうとした瞬間、また着信を告げる。


「今度は何や?」

《…迎え、来て》

「行かんて言うてるやろ?出て行ったんは名前なんやから」

《…お願い》

「あかん」

《蔵に迎えに来て欲しい…》

「駄目ったら駄目、ほな切るで」


再度一方的に電話を切って、さっきより罪悪感は募るしやりすぎたかなって思うけど。これでええねん。


『白石、ほんまに行かんでええん?』

「謙也もしつこいで」

『、』


憂愁な顔する謙也を横目にラケットを持ってテニスコートに行くけど…

ハァ…俺も甘いわ。やっぱり心配で堪らへんくてテニスに集中出来ひん。収拾つかへん思いをどないしよかなぁなんて空を見上げると、謙也がまた携帯を差し出した。


『侑士から』

「…やっと名前が帰る気になったん?」

『みたいやな』

「しゃーないなぁ…謙也、少しの間部活任せるで」

『ええで、行ったり?』


(名前帰らせたから白石に宜しく言うといて)

侑士君に感謝してラケットを置いて駅まで全力疾走。
名前も悪いけど言い過ぎた自分も悪いと思う俺は、これやから名前が好き勝手するんやって分かるけど、せやけど『蔵に迎えに来て欲しい』の一言にやられてしもたんや。
何をやっても俺が一番やって言うてくれる名前が心底愛しい。


『……、くら?』

「遅かったから迎え来たで」

『なん、で?』


駅の改札口に行くとタイミング良く表れた名前はいつものおちゃらけた顔やなくて眉を下げて涙目で。
凹んでるのが目に見える様子に俺の苛々も消えてった。


「アイス買うのに何処まで行ってんねん」

『え、』

「名前はコンビニ、行ってたんやろ?」

『蔵…』

「アイスもう食べたん?」

『蔵と、食べたいからまだ…』

「ほな買いに行こか?」

『…うん』


溜めてたものをボロボロ溢しながら腕にしがみついてくる名前の頭を撫でて、改めて名前を可愛いと思た今日やった。


(名前先輩、今日の家出はどうでしたー?)(氷帝は暫く行きたくない)(何やあったんです?)(宍戸君はムカつくし侑士は説教してくるしもう嫌だ)(え、名前侑士に怒られたん?)(『お前は人に迷惑掛ける暇があったらちゃんとマネージャーやれ』て)(確かに)(何ですって謙也!?)(それは俺の台詞やで名前ちゃん)(く、蔵、怒らないで、ね?)(今後次第やろかー?)



(20090518)


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