platonic love | ナノ


 


 愛慕する僕



結局は彼女が僕の全てなんです


charm.2-2 愛慕する僕


何をしたって何処に居たって、物質には必ず影が存在するように、俺と名前も離れられへん2つのピースなんやと思うとより一層彼女を包む腕に力が入った。


『く、くら…?』

「んー?」

『もう、限界…!』

「駄目」

『だ、駄目なのはアタシの台詞だから!』

「ハハッ、後もう少しの辛抱や」

『無理無理無理ー!!もう足の感覚無いもん!1時間も座禅なんか無理ー!』

「勝手に足崩して…悪い子やなぁ」


あれから早々に立海を引き上げてバスに乗り込むと、聞き慣れた『ごめんなさい』を何度も繰り返すもんやから、俺もお説教は止めて座禅でもして落ち着く心を持って貰おうかって妥協したったのに。

僅か10分足らずで根を上げる名前に大きく溜息を吐いて良い所に触れた。


『ぎゃっ!!』

「やっぱり名前は口で言わな分からへんねんな?」

『とか言いながら痺れた足触るの止めてよ!悪趣味!』

「んー、善い趣味しとるって言われるんやけど」

『ぎゃあ゛!!そそそそれ別の意味だから!』

「ホンマ反省してへんみたいやなぁ」

『してます!してます!ごめんなさい!』


良い感じに痺れた足じゃ逃げる事も出来ひんみたいで、軽く触れるだけで涙目で訴える名前が可愛くて仕方ない。
せやけどなぁ、迎えに行った時俺がどんだけ心配したか分かって貰わなあかんやろ?
丸井君にベッタリ引っ付いて転校するや何や可笑しな話してて…全ては自分が蒔いた種やねんで。

そんな心境の俺を余所に憐れんだ様な視線を向けるのは謙也やった。


『白石、その辺にしといたったら?可哀想やん』

『流石謙也…!ね、もう十分だよね…』

「あかん」

『鬼やな…』

「何や謙也、名前の肩持つんか?」

『名前頑張りや』

『謙ちゃん酷い…!』


それに引き換え、


『そうですわ、部長もっとやって下さい』

『光の裏切り者!』

「…………」


俺と同じ視線で見てるのは財前。
あー、それはそれで気に入らへん。


「名前、」

『なにー…』

「もう勝手な事したら駄目って分かったやんな?」

『……多分』

「多分、やないやろ?名前が抜け出す度に向こうにも迷惑掛かるんやで?」

『皆は喜んでくれてたもん』

「……今、何て言うたん?」

『っ!ごごごめんなさっ…』


あーあー、ほんまに反省の色は無いんやな?
俺が優しくしたら付け上がるだけなんは十分分かった。怒りたくないけどそれが名前の為になるなら心を鬼にする時やって必要っちゅう事や。


「………」

『く、く…く、ら…?』

「家出したらあかんて何回言うたら分かるんや!?その度にどれだけ心配して迎えに行っとると思てんねん!名前が嫌いやから言うてるんちゃうねんで?名前が大事やから、何かあってからじゃ遅いからしつこく言うてんねん!もし名前がしっかりしてたら今日みたいな事にもなってへんのやで!危うく自分の意思関係無く転校させられそうやった、そういう危機感ちゃんと持ちなさい!!」

『はははい!』

『転校て何です?』

「幸村が勝手に話進めようとしてたんや」

『あー、あの人普通にしそうですわ』


もしも俺が迎えに行ってなかったら確実に名前は明日から立海生になってたやろう。
改めて思うとさっきの言葉だけじゃ足りひんわ。


「せやから名前、」

『ま、まだ何かあるの?』

「あれだけじゃ全然足りひん」

『ええ…!』


青ざめてげっそりした名前なんやお構い無しに酸素を吸い込むと、


『く、蔵!あのね、』

「…うん?」


名前も何か言いたそうにするから、一先ず吸い込み過ぎた酸素は音を立てず空気中へ逃がした。


『アタシ、蔵が好きだよ!』

「今日はそれじゃ誤魔化されへんよ」


いつものパターンで流されたらアカン。今日こそはちゃんと名前に反省させて懲りて貰うんや。


『ち、違うの!』

「、」

『あのね、他の人と喋ってると思うの!アタシには蔵じゃなきゃ駄目なんだって…』

「……………」

『だからね、アタシ誰と居ても蔵の事…』


流されへん、
そんなん無理な話やんなぁ?
誰と居っても俺ん事考えて、俺ん事好きやって思うとか…
そんな事言われたら“好き”以外どうでも良くなるわ。


「名前、おいで」

『…怒ってない?』

「ん。怒ってへん」


ホッとした顔で擦り寄ってくる、そんな彼女に振り回される自分が意外と嫌いやないかもと思った今日。
彼女を甘やかすのは周り以上に俺自身やった。ま、それも俺だけの特権っちゅう事で。(あれ、俺だけ…?)



(200905)


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