platonic love | ナノ


 


 杞憂人



(ver. kenya)

心配っちゅうか怖いっちゅうか、
弱肉強食の世の中がほんまに理不尽やと思った


charm.5-1 杞憂人


『謙也、ギリギリまで言うたらあかんで?』

「う、うん…」

『ほんま面倒臭いなぁ…』


鈍痛でも食らったみたいに浮かん顔な白石やけど、多分身体の半分は苛々で埋められとるんやと思う。

そんな白石は触らぬ神に祟り無し、それでも俺は必要以上に気を使う訳であってそれもこれも、今日の放課後他校から来客があるせいやねん。今度練習試合をやるとか言うて、その話をする為プラス見学するとか。そんなん電話で済ませばええし見学なんやせんでええっちゅうねん!
しかも何でやか、六角の佐伯と山吹の千石て…アイツ等部長でも無いのに何やねん…

兎に角、その2人となれば絶対、ぜーーったい問題が起きると踏んだ俺は、今日は白石に近付かんとこうと誓った。(せっかく家出せんくても意味無いやんボケッ!)


『謙ちゃーん』

「…な、なんや」

『……………』

「よ、用事無いんなら俺いいい行くで!素振りしたいし!」

『……怪しい。』


白石から遠退けば今度は名前、白石に佐伯と千石が来ることは口止めされとるし(多分名前が大喜びするやろうから)、今日はアイツにも近寄りたくないのに…!
しかもバレた?もうバレたん?
否、バレてないと思うけど完璧勘ぐっとる。俺真面目やから嘘吐くん苦手やのに!


「あああ怪しい訳無いやろ!変な言いがかりは止してくれへんか!」

『眼は泳いでるし吃ってるし喋り方変だし絶対何か隠してる』

「喋り方は普通や!」

『謙ちゃん。知ってる事さっさと吐きなさい!』


あかんあかんあっかーん!
こうなったらもう走って逃げてまえ、そう思たのに後ろからは聞き慣れへん声が。


『、あれ?』

「、」

『あー!名前ちゃんだ久しぶり!相変わらず可愛いねー、デートしようよー』

『こら千石、会って早々それは女の子に失礼だよ。ね、名前?』

『虎次郎!!え、何で此処に居るの?』


終わった。

白石の予定ではきっと適当に話を済ませて名前に会う前にとっとと帰らせるつもりやったんやろう。せやけどもう手遅れや…白石より先に名前に会うてしもたやん!何やってんねん白石!何処行ってんねん白石!
言うとくけど俺のせいちゃうぞ、俺は何も悪ないで…!


『今日は今度ある練習試合について話しをしに来たんだ、聞いて無かったのか?』

『全然知らない……まさか謙也、虎次郎が来るの黙ってたって訳?』

「おおおお俺は何も知らん!俺は石になる」


ツンと顔を背けた瞬間『馬鹿じゃないの!』って聞こえて来たけどこっちも必死やねん。お前かて白石がどれだけ怖いか分かってんねやろ?巻き添え食う俺の身にもなれっちゅう話しや!

せやけど。
さっきから引っ掛かっててんけど…名前の奴、佐伯にばっか反応して千石スルーしてへん?ただの気のせい?


『ごめんね虎次郎、知ってたら近くまで迎えに行ったのに…』

『気にしなくていいさ、今こうして会えたんだからそれだけで十分』

『こじ……』


っちゅうか白石ー。早よ来てくれんとほんま嫌な展開になってんで…
“こじ”って何やねん“こじ”って!


『名前ちゃーん!佐伯君ばっかり構ってないで俺とデートしようって』

『丁重にお断りしまーす』


………ん?
お断り?あの名前が男の誘い断ったん?
そそそそんな阿呆な話しがあるんか…!気のせいやなくてほんまに千石はスルーしとったん?
ビックリし過ぎて顎が外れそうになりながらも一部始終を見届ける俺。(今のうちに逃げときたいけどちょっと気になんねん!)


『お断りってつれないなぁ、俺じゃ駄目なの?』

『ハハハ、分かってないな千石。名前は俺じゃなきゃ嫌なんだよな?』

『うん!こじが良いー!格好良くて優しくてー、そんな虎次郎じゃなきゃ駄目ー』

『格好良くて優しいって俺にも十分当て嵌まるじゃん!俺の何がいけないって言うのー?』


それは俺も気になる。
寧ろそれが気になってしゃーない。
俺は千石と一緒に名前の言葉を待った。


『千石君が駄目な理由なんか分かり切ってるじゃん!タラシなとこが嫌なのー!』

『酷いなぁタラシなんかじゃないのに』

『女好きでいつも誰かのお尻追っ掛けてナンパっぽくて軽くて、そういう人嫌いだもーん』

『事実だから仕方ないにしてもバッサリ切られたな千石』

『本来の姿は一途なのに分かってくれないかなー』

『分かりたくないですぅ』


ちょう待ってくれ。
千石に対しての応対は白石が見たら感動するくらい良かったと思うで…思うけどな、いっつも誰かのケツ追っ掛けてナンパっぽくて軽いのはお前やろ…名前の事やん…!

せやのに何で誰も突っ込まへんねん…
脳内では理不尽なアイツの言い訳に一喝してやりたいって思うのに、やっぱりも俺も口にする勇気は無かった。(白石が聞いたら何て言うんやろな…)


(それより名前、忍足が固まってるけど大丈夫なのか?)(知らなーい!アタシに隠し事した罰でも当たったんじゃないの?)(名前が良いなら良いけど…)(うん平気平気!それより、本当にアタシに会えて嬉しい?)(当然だろ?だけど名前も、いつまでも俺をフリーにして後悔しない?)(こじ……!)



※千石君の扱いが酷くてごめんなさい!

(20090717)


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