02.
人を好きになるって
簡単なようで難しいこと?
vol.2 purity
好きになって貰えるなんや光栄ですわ
ニヒルに笑った光君の顔が印象的でアタシの眼はハートになってた事間違いない。
『名前、ホンマに財前に惚れたとか言わへんよな?』
「うーん、ホンマに惚れちゃったかも」
『…本気なん?』
「三次元も良いもんだね蔵りーん」
へへ、なんてニヤけて笑うアタシとは違って額に手を置いて疲労感たっぷりな蔵。
その歳でそんな顔してたら大人になると凄く老けるんじゃなーい?
『あんな名前、財前は止めとき』
「何で?アタシの自由じゃん」
『財前は『おはようさん白石ー!』』
「、」
『謙也、今大事な話しとったんやけど』
『大事な話?あ、昨日言うとった従姉妹?』
『せやで』
光君が駄目だとか、どうせまたシスコン根性(イトコン?)なんでしょー、なんて浮かべてるとまた誰かが横入りしてきて。
キンキラキン頭の謙也って男の子は光君とは真逆にニコニコ愛想が良い。
謙也…謙也?何か聞いた事があるんだけど?
『名前、やっけ?宜しくな』
「あ!謙也って蔵のBL相手!」
『え?BL?』
『くだらん事言うんは止めろて言うたやろ名前』
「でも本当のことでしょ?」
『っちゅうかBLて何やねん』
「男の子と男の子がイチャイチャイチャイチャすることだよ」
『男が男とイチャイチャ……な、何でやねん!何で俺と白石が!気色悪いにも程があるわ!』
『俺の台詞や謙也』
オーバーリアクションな謙也が面白くて、初めて会うのに緊張なんかしなくて笑ってると肩に手を置いて来た蔵がまた話を戻す。
『とにかくや、財前は止めとき?』
「えー…格好良いのに」
『財前て、財前?何や名前、財前が好きなん?』
「うん!格好良いよね!」
『まぁ顔は男前やねんけどなぁ…』
『謙也も止めた方がええ思うやろ?』
『口は悪いけど根はええ奴やし…どうなんやろな』
「謙也までそんな事言って!」
『格好良くて優しくて典型的な王子様タイプが好きな名前には合わへんっちゅうことや』
「何それ…」
2人の言う言葉に納得はいかないけど、そうこうしてる間に学校に着いて。
朝練があるって言う蔵に着いて行くのは面倒だと思ったけど光君が居るとなれば当然行くに決まってる。
「光君居るかなぁ?」
『そら居るやろうけどまだ来てへんかもな』
「寄る所あるって言ってたもんね、何処行ってたんだろ」
『大方コンビニやろなぁ』
「えー!」
さっき会った時『寄る所あるんで先行きますわ』って言った光君がコンビニ?なんて夢が無い。
光君はきっとアタシの為にプレゼントを買いに行ってくれたんだよ、初めて出逢って恋に落ちた2人の結末なんてそんな感じでしょ?
『名前、それはリアルに夢見過ぎや。二次元に洗脳され過ぎなんちゃうか?』
『白石が言うてた通りホンマにヲタクなんやなぁ!』
「これはヲタクの問題じゃないし!」
『現実と理想は全くの別物やねんからそういうんは頭ん中だけにしとき?』
「そんな事ないもん!光君は優しくてアタシに、」
『“アタシに”何です?』
「、光君!」
『悪いけど一部始終聞かせて貰いましたわ』
コンビニ袋からジュースを取り出した光君はいつから居たの、それも聞く間も与えてくれず騒いでたアタシ達3人の前で続ける。
『人の考えは自由ですわ、せやから何思てもええけど』
「ひかる、くん…?」
『俺はヲタクの妄想に付き合わされるのは真っ平御免ですから。妄想なら1人でやって下さい』
「――――――」
『財前、そんな言い方せんでも、』
『ほな謙也先輩が付き合うたったら?』
格好良よくて優しい光君。その理想像が音を立てて崩れた気がした。
ううん、本当は分かってるのアタシが悪いことくらい。光君がどんな人かも知らないで好き勝手に言ってた自分が最低なの。
だけどね、アタシだって初めから二次元に恋してこんな風になった訳じゃない。
『名前、泣きたい気持ちも分かるけど財前が言う意味も分かるやんな?』
「…うん」
『ほな今日は俺朝練休むから一緒に教室『簡単に人ん事好きになったらあかん』』
「え?」
教室まで連れてってくれる蔵を制止したのは謙也で、ニコニコした顔を顰めた姿はさっきより全然男の子だった。
『財前は名前ん事知らんからあんな言い方してしもたんやろうけど、名前ももっと人ん事見なあかん』
「わ、分かってるよ…」
『ちゃうねん、知らん男の為に泣くんやなくて自分の為に泣きて言うてんねんで?』
「……………」
『もっと自分こと大事にしたり?』
蔵から話を聞いた謙也はヘタレだけど本当は頼りになる人だって言ってた。
本当にそうなのかもしれないって、撫でられた頭から温かいモノが伝わった。
(20090528)
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