15.
運命って言葉が存在してる以上、
アタシの言葉全ては天啓が来てる?
vol.15 a word
「謙也っ」
『名前……』
アタシが教室へ戻ると謙也は後ろの隅っこで窓から外を見てた。
肘を付いて遠くを眺める姿はいつもの“らしさ”が無くて、やっぱり謙也はニコニコ笑ってる方が良い。
『財前と白石んとこ居らんでええんか?』
「そんなの…謙也と、話したいことあるから」
『…別、無理に言わんでええねんで』
アタシが話したくなかったのはそういう意味じゃない。自惚れ発言ではあるけど、謙也に言う必要が無いとかそんなんじゃなくて心配させたくなかった、しなくていい嫉妬なら無い方が良いって思っただけなのに。
「そんな顔しないで…」
『、そんな顔て、どんな顔しとる?』
「小さい子が体育座りで拗ねてる感じ…?」
『なんやねん俺がガキや言いたいん?』
「少し、」
『う、うっさいわ!否定せんかい!』
ちょっとだけ硬かった表情が和らいで頬っぺたを赤くする謙也が可愛くて乙女心を刺激させられる。
でもね、今はキューンてしてる場合じゃなくて誤解を解かなくちゃいけない。
「謙也、」
『な、なんや』
「何でもないから!」
『は?』
「アタシとあの人達何でもない」
『え?』
「だ、だから、写メは勝手に撮られたけど、そこにアタシの意思は無いし…」
さっきのさっきまでこの話題だった筈なのに謙也はって言うとキョトンと眼を真ん丸にして。
何を言いだすんだって言いた気に瞠若されるとアタシもどうしたら良いのっていうね、何か気まずいじゃんか…
「え、えっと…」
『そうなんか』
「、へ?」
『それならええねん!』
「わっ、」
どうしようか、謙也から窓の外へ視点を変えて制服のスカートを掴んだ途端、にゅっと伸びてきた謙也の腕がアタシの頭に乗っかった。
わしゃわしゃと音を立てる髪の毛は決して丁寧とか優しくとかそんなんじゃないけど、髪がぐちゃぐちゃになるくらいのが謙也っぽい。
それに、やっと笑った。それなら髪の毛の犠牲なんか眼じゃないじゃん。
『せやけどそれなら何でさっきは、はぐらかしたん?』
「そこ聞いちゃうの?」
『聞いたらあかんの?』
「別に良いけど…察して、欲しいよね…」
『何をや!ハッキリ言わんと分からへんねんで!』
アタシの脳内に居る理想的な王子っていうのはこういう時、全部を見透かして『わざわざそんな事を伝えに来るくらい、俺が好きなんだ?』って悪戯っぽく笑うんだけど。
だけどアタシだって光のことで学習はしてるし、あくまでも理想は理想、理想と現実は違う。今アタシが好きなのは脳内の王子じゃなくて目の前に居る謙也だもん。
「あ、あのね、」
『ん?』
「謙也が知らないなら、余計な心配させたくなかった、だけ…」
『……そ、それって、』
「…好きってこと……」
『―――――』
ここまで言ってしまえば流石の謙也でも誰でもアタシの想いは容易に分かるだろうから。
だから言うつもりなかった告白までしちゃったけど、
『…ありがと』
一呼吸、間を置いて謙也はお礼を言った。
(20090730)
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