14.
言葉より大切なモノ、
それって見えないからこそ大切なの?
vol.14 life size
平常心、平常心。
そりゃやっぱり可愛いって言って貰えたことに嬉しい気持ちは捨て切れないけど。でも謙也にはバレないよう気を付けなきゃ。
世の中知らない方が幸せなことだってあるんだよ。(あくまで謙也がアタシを好きなこと大前提な話ですけどね!)
『で、何の話してたんや?』
「な、なな、何でもないよ!今日も天気良いねっていう、ただの世間話だから…!」
『せやなぁ、めっちゃ快晴やんな!せやけどお年寄りみたいな会話してんなぁ』
「あ、あははっ、だってほら雨だったらテニス出来ないし!」
『そか。優しいなぁ名前は』
ニカッて歯を見せて笑う謙也は超可愛くてキュンてするんだけど…!でも嘘を吐いたばっかりに罪悪感が否めない。
ごめんね謙也、なんて心の中で謝ってると、
『そういえば今、名前の写メ撮った言うて騒いどった奴とすれ違てん』
「ぶっ!」
余裕ぶっこいてたばっかりにお茶を噴きそうになっちゃって。
結局バレてんの?そういう運命なの?
苦笑する蔵と、顔を背けて喉で笑う光を尻目にどう話を反らせばいいものか。笑ってないで何かフォローしてくれればいいのに…!
「あ、あのね、謙也、」
『写真、撮らせたん?』
「ち、違うよ!そういうんじゃなくて…」
『なくて?』
「えっと……」
『……………』
「そ、その話はもういいじゃん!別に何でもないし」
正直、真っ直ぐこっちを映してくる謙也に居たたまれなかった。
ここまで来れば素直に勝手に撮られたんだって言えば良かったけど、どうにかして誤魔化せないかってそればっかりしかなかったもんだからアタシも必死だった訳で。
だって、謙也に要らない心配させたくないもん。
『…分かった』
「、本当?じゃあさっさとご飯に『今日は教室で食べるわ』」
「え?」
『1人で食べたい気分やねん』
「け、謙也っ、」
『堪忍』
「……………」
お、怒った……?
納得してくれたって思ったのに怒った…?怒って帰っちゃったの?
「、けんや……」
『ホンマ阿っ呆やなー』
「な、阿呆って何!?」
謙也の背中を追い掛けることも出来ずに黄昏るアタシを慰めてくるる訳でもない光に怪訝を向けるけど、苦笑してた蔵まで『今のはちょっとなぁ…』とか。
あ、アタシは光と蔵が言わない方が良いって言ったから、アタシもそう思ったから振り切っただけなのに…!
『名前、臨機応変っちゅう言葉があるやろ?』
「…そんなの知らないもん」
『阿呆』
「だ、だから光はさっきから阿呆阿呆って何なの…!」
『“何で俺には言うてくれへんねん”』
「は?」
『謙也先輩の代弁』
「……………」
なに…?
良かれと思って誤魔化したけど、本当は謙也も話して欲しかったって…?何も知らないなら良いとしても、知ってしまえば隠されたくない?
『謙也って寂しがり屋やからなぁ』
『ちょっと鬱陶しいスけど』
『ハハッ、それが謙也やから』
「……アタシ、どうしたらいい?」
光と蔵が言う様にアタシのせいで謙也が寂しい思いをしたんだったら…
『自分はどうしたいん?』
「謝りたい…」
『ほなやる事決まっとるやろ阿呆』
「うん…アタシ謝りに行ってくる!!」
『さっさと行け』
光に阿呆って言われたのはちょっとムカつくけど、何回阿呆って言われても仕方なかったかなって。
追い払うみたく左手をぶらつかせる光を背に、謙也の居る教室へ走った。ちゃんと謝るから待っててねって。
『ハハッ』
『何です部長、急に笑い出して』
『いや、名前も謙也も可愛えなぁて』
『阿呆過ぎスわ』
『せやけど財前も、優しいな?』
『…………』
『有難う』
『これやから部長は嫌いなんですわ…』
(20090727)
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